大学卒の就職内定率が8割という就職氷河期。
様々な調査で、最近の若者は消費よりも貯蓄を優先する、などという結果が出ているようです。将来への不安や、先行きの不透明さを思うと、そういう傾向であることはうなづけます。
とはいえ、厳しい就職戦線を勝ち抜いて、この春から晴れて新社会人という若者も大勢います。今回は、それら新社会人にみなさんに向けて、ちょっとしたアドバイスを送りたいと思います。
●アドバイス1 貯蓄の習慣化
貯蓄志向といわれる今の若者。しかし、貯蓄ばかりをしているのもいかがなものでしょうか。
例えば、若い時期は人との関係づくりも大切なことだと思います。旧友や同僚だけでなく、いろんな交流会に積極的に参加するのもよいでしょう。
また、自己投資。これからは会社の肩書きではなく、自分という人間の中身で勝負する時代。自分に投資をしてレベルアップを図ることも必要です。ビジネス英会話や資格取得などにお金を使うことも有意義です。
そこで最低目標として、1年に50万円の貯蓄をお勧めします。具体的には・・・。
積立例
(1)毎月3万円、ボーナス時10万円
3万円×10=30万円
10万円×2=20万円 ・・・ 合計50万円
(2)毎月2万円、ボーナス時15万円
2万円×10=20万円
15万円×2=30万円 ・・・ 合計50万円
ボーナスをあまり当てにできなければ、毎月4万円でもよいでしょう。大切なのは、これらの貯蓄は将来の自分への仕送りと肝に銘じて、日々の生活ではなかったものとして扱うことです。
余ったら貯蓄しようという考えでは貯蓄はできません。貯蓄を抜いた残りでやりくりする、というのが貯蓄のできる考え方です。
財形貯蓄がある企業ならば、給与から天引きされた残りが手取りとなりますので、若いうちから始めておけば負担感を感じることなく自然と貯蓄が進みます。
●アドバイス2 お金の5年計画
次のアドバイスは、いつも5年程度先までに使うお金を意識し計画を持つことです。
大卒の場合、現役合格者なら22歳で就職ですので5年後というと27歳になります。
27歳になるまでの間、どんなライフイベントがあるでしょうか?
クルマを購入する人は減少傾向ということですが、それでも少なからずいます。掛ける費用は、高級車から中古車まで千差万別ですが、毎年50万円を貯蓄していれば250万円のクルマを買うことができます。
その他にも、早い人なら結婚が決まるかもしれません。その時かかる新生活の準備資金として250万円の一部を活用できるかもしれません。
それからこの低金利下、資産運用をと考えても元手となる資産がなければ運用することはできません。いざという時のために100万円を預貯金で確保し、残りの150万円を積極的に運用するということもできます。あるいは、月々の貯蓄のうち1万円を投資信託などで積立を行うのもよいでしょう。
家計管理もそうですが、給与生活車はとかく目先の1ヶ月単位でやりくりを考えがちです。今だけでなく、当面の近い将来、せめて5年くらいの間の資金計画はしっかりと考えておきたいものです。
●アドバイス3 保険加入は慎重に
3番目のアドバイスは生命保険です。
就職すると、責任ある社会人になったんだからいざというときのために生命保険に加入するのは当然のたしなみたしなみ、と保険加入を勧誘されることがあります。
私も就職してすぐに月々1万円の生命保険に加入しました。10年後に解約するまで120万円以上を支払い、戻ってきたお金はわずか20万円ほどでした。
そもそも生命保険に入る目的は何でしょうか。
自分に万一のことがあった場合、残された遺族が生活に困らないように? じゃあその遺族とはいったい誰のことでしょうか。ご両親を扶養しているなどの事情がない限り、何千万円もの死亡保障はいらないんじゃないでしょうか。
では医療保障はどうでしょうか。病気になる可能性はまだまだ低いと思いますが、事故やけがで入院することはあるかもしれません。
職場で斡旋されるグループ保険や共済などを活用する方法もありますが、一生涯の保障を求めるなら若いうちに終身型の医療保険に加入するのはよいことだと思います。
毎月1万円の保険料でも、22歳から65歳まで支払続ければ、その金額は膨大です。
保険料の例 1万円×12ヶ月×43年=516万円
このように生命保険は、支払総額が数百万円になることもある非常に高額な買い物です。本当に必要なのか、必要ならば何のリスクに備える保険に加入するのか、慎重に考えて下さい。
結婚する、子供が産まれるなど、守るべき遺族がいないうちは、保険よりも貯蓄を重視して将来に備えておく、あるいは自己投資やレジャーに使った方が価値のあることかもしれません。
●アドバイス4 ローンに頼らない
何かほしいものがある時、ローンで今すぐ手に入れるか、それともお金を貯めてから買うか、迷うところですね。
気軽に利用できるクレジットカードも借り入れの一種です。分割払い、リボルビング払いを選択するのは、年率15%程で借り入れをしているのと同じことになるので、注意が必要です。これは。10万円の買い物をして24分割で支払うと、1万6千円以上を余分に支払う計算になります。
借り入れをせずに済ませるには、貯蓄額以上の買い物をしてはなりません。どうしても足りない場合は、予算の範囲で同種のものを選ぶのが賢明です。型落ちのパソコンや、中古車などです。よりグレードが高いものは、十分に貯蓄ができるようになってから買えばよいのです。
●アドバイス5 リストアップと優先順位
社会人になって給料をもらうようになり毎月10万円以上のお金を自由に使えるようになったとしても、欲しいものには限りがなく、使えるお金には限りがあります。
限られたお金を有効に使うには、目の前にあるものから衝動的に使ってしまうのではなく、あらかじめ欲しいものをリストアップしておき、それに優先順位をつけ、実際にお金を出す前に一呼吸おいて、本当に支出してよいのか確かめてみることをお勧めします。
浪費を減らし、無駄を少なくできれば、生活の満足度を落とすことなく貯蓄の余力を生み出すことができるはずです。
はじめが肝心です。5年、できれば10年くらい先のことを意識して、自身のマネーマネジメントに取り組んでいただきたいと思います。
株式会社 住まいと保険と資産管理
ファイナンシャルプランナー 山川正人