世界一の投資家、ウォーレン・バフェット氏がCEOを務める
「バークシャー・ハサウェイ」社。投資信託ではありませんが、実態は会社型の投資信託に近く、その株式はニューヨーク証券取引所に上場されていて買うことができます。
この会社の過去〜現在を振り返り、未来を想像してみましょう。
タイトルを見て「“バークシャー・ハサウェイ”って何?」と思った方もいるのではないでしょうか? 同社を経営する「ウォーレン・バフェット氏」は世界一の投資家として有名ですが、世界最大の投資持株会社“バークシャー・ハサウェイ”は日本ではあまり知られていません。まずはこの会社の驚異的な事実を紹介しながら、考察していきましょう。
▼“バークシャー・ハサウェイ”社の輝かしい過去
同社の事業内容は、1960年台前半にバフェット氏が降臨した(経営権を取得した)前と後で大きく異なります。19世紀に同社が設立された後、バフェット降臨前まではずっと「毛織物事業の会社」であったのが、バフェット降臨後は
「保険事業も行う、投資会社」へと180度の事業転換をしてしまったのです。
その後、バークシャー・ハサウェイ社の投資会社としての成長は目覚しいものでした。
同社がウェブサイトで公表している英語のアニュアルレポート(年次報告書)を見ると、
1965年から2008年までの同社の純資産の伸び率は年平均20.3%、累積リターンは362319%(3600倍以上!)。「意味がわからない!」というツッコミを入れたくなる数字です。そして、同社の株価も純資産の伸びと比例するように、天高く上がり続けてきました。
▼最近10年間の“バークシャー・ハサウェイ”は「不調」だった?
1960年台から30数年に渡って純資産を伸ばし続けてきた同社ですが、
1999年は、1965年以来最低の0.5%という純資産の伸び率。同時多発テロ事件があった
2001年は巨額の保険金支払い等によりマイナス6.2%という初めての純資産減少。
その翌年からは、10.0%、21.0%、10.5%、6.4%、18.4%、11.0%と6年間で純資産を2倍以上にしましたが、過去の平均であった「20%台の伸び率」を見せた年は2003年の1回だけ。金融危機の起きた
2008年は、マイナス9.6%という最大の純資産減少となりました。
これだけを見ると、最近10年間は「不調」だったように見えます。しかし、
相対的に見ると、実は「かなり優秀」だったのです。
▼最近10年間の“バークシャー・ハサウェイ”を米国株全体の動きと比べると
ここで、MSNマネーの株価検索機能を使ってみましょう。同社の株式にはAとBの2つのクラスがありますが、数千ドルから買うことができて、私自身も2003年前半から保有し続けている「B株」のチャートを一緒に見てみましょう。
▼“バークシャー・ハサウェイ”社(B株)の過去10年の株価推移
http://jp.moneycentral.msn.com/investor/charts/chartdl.aspx?symbol=US:BRK.B
2000年1月末の株価は1646ドルでしたが、2009年11月の株価は3300〜3400ドル台で推移しており、10年前と比べて2倍前後です。一方、同じ10年でニューヨークダウの動きはどうだったでしょうか? 上記のチャートの下にある「ダウ」にチェックを入れて、「チャートの更新」をクリックしてみましょう。青い線の動きを見ると、現在のニューヨークダウは10年前と同じくらいの水準で推移していますね。
つまり、過去10年の同社の株価をニューヨークダウ30種平均と比べると「バークシャーの勝ち」でした。また、バークシャー・ハサウェイ社の年次報告書には「同社の純資産の伸び率」と「S&P500の株価上昇率」を比較している表が載っていますが、
過去44年では38勝6敗で「バークシャーの圧勝」、直近10年でも7勝3敗で「バークシャーの勝ち」であることが読み取れます。
▼“バークシャー・ハサウェイ”の未来はどうなる?
ここまで見てきたように、過去から現在まで優れた運用成績を残してきた同社ですが、これからも過去44年間と同じように「年平均20%で純資産が成長する」のでしょうか?私は、2つの理由で「過去の平均よりは明らかに低くなる」と予想しています。
1つめは、運用資金が巨大になりすぎたこと。 バークシャー・ハサウェイ社は2009年3月時点の時価総額が世界で12位に入るほどの巨大企業になりましたが、一方「収益性や成長性が高い小さな会社」は同社にとって効率のよい投資対象ではなくなりました。
大規模な案件にしか投資できない状況では有効な投資のチャンスが減り、「利益額」は上がっても「利益率」は下がると想定されます。
2つめは、バフェット氏の寿命の問題。 同社のCEOを務める1930年8月30日生まれのバフェット氏は、来年で80歳。つまり、投資会社としてのバークシャー・ハサウェイ社は、10年以内に世界最高の実績のあるファンドマネージャーを失う可能性があります。バフェット氏の死後も、素晴らしい経営陣や、優秀な子会社の経営者が“バークシャー・ハサウェイ”を支えていくでしょうが、成長率は過去よりも低下するのが自然だと思います。
しかし、それでも同社は
優れた「アクティブ・ファンド」の1つであり続ける―――平均的な米国株を上回る運用成績が継続する可能性は、相当あると思います。なぜなら“バークシャー・ハサウェイ”の経営陣・従業員・子会社の社長・大部分の株主は、
バフェット氏の死後も、彼の優れた投資哲学や精神を受け継いでいくでしょうから。
株式会社 住まいと保険と資産管理
ファイナンシャルプランナー CFP 白鳥 光良