筆者は投資歴10年以上になりますが、投資を始めた当初は、四季報やマネー誌を買いあさり見よう見まねで値上がりそうな株式に投資をしていました。一つの株を買うのに何十万という額が必要で、手持ちの資金で買える株の数は限られポートフォリオのほとんどは厳選して選んだ日本株式が占めていました。
日本の株式市況がいい時は当然、収益が上がっているのですが、ひとたびマーケットが悪くなると全体的に株価は下がり、収益はあっという間に吹き飛びます。中には、それまで着実に売り上げを伸ばしていた会社が傾き、その銘柄の株が紙切れ寸前になってしまったこともありました。また、デイトレードのように短期で利益を得ようと試みた事もあります。安い時に買って高い時に売ろうとするのですがなかなか上手くは行かず、株価が気になって日常生活に支障をきたす有様でした。当時は投資というものは、売り買いして儲けるものだと思っていたのです。
…リスクを極力抑え、効率良く気軽に資産運用をするにはどうすれば良いのだろうか?
私がFPの知識をつけていく中で、行きついた答えは投資信託の活用でした。投資信託とは、多くの投資家から集めた資金を一つにまとめて、ファンドマネージャー(運用の専門家)が株式や債券などで運用し、その成果に応じて収益を分配するという金融商品です。株式に投資する場合もファンドマネージャーは何十、何百という銘柄に投資をするため、例えその中に倒産する会社があっても、投資信託そのものに大きな影響を及ぼすことはありません。
投資信託には、市場の平均以上の運用成績を目指す「アクティブ運用」と、市場平均並みの「インデックス運用」があります。例えば日本株式でいえば、日経平均株価を上回る運用を目指すのがアクティブ運用で、日経平均の動きを目指すのがインデックス運用です。
一見、ファンドマネージャーの手腕が試されるアクティブ運用の方がいいように見えますがそうとも言い切れません。なぜなら保有している間にかかるコスト(信託報酬)や販売手数料が一般的に高いことと、日経新聞が調査した結果、アクティブファンドが実際にインデックスファンドを上回る成績を残せたのは過去5年間においておよそ3割未満だったからです。
私の運用スタイルは、インデックスファンドを中心に国内株式だけではなく、国内債券や外国債券、外国株式などの配分を決め、毎月積み立てて行っています。運用期間は長期間です。個別銘柄を買う時のようなスリルはありませんが、世界経済の波に乗っておおらかな気持ちでゆったりと投資を楽しめるようになりました。
昨今の世界各国の経済成長率を見ると、新興国の成長はめざましいものがあります。かつて高度経済成長を遂げてきた日本のように、これから成長していくであろう国々にも時間をかけてじっくりと投資ができるのは投資信託ならではの魅力だと思います。
最後に投資信託の留意点を3つあげておきます。
・投資の目的を明確にしましょう
投資を行う前に、「いつ頃使う」「何のため」の資金なのかをはっきりさせましょう。例えば、数年後に使う予定の決まっている資金であれば、投資信託の中でも国内債券やMMFなど安全性が高い商品が向いています。しばらく使わない資金であればリスクをとって収益性のある株式投信などを選ぶこともできます。収益性の商品に一度に投資をする場合は、将来のライフプランを見据えた余剰資金を把握して、投資に回せる金額を確認してから始めましょう。FP相談も役立ちます。
・商品のリスクを知っておきましょう
投資信託は元本保証の商品ではありません。過去の実績や可能性を強調するパンフレットやセールスマンの言葉を鵜呑みにして、プロに任せておけば安心だからという気持ちで選ぶと思わぬ打撃を受けることがあります。運用資産が目減りしても責任を取るのはプロではなく自分だということを忘れないでください。
・仕組みが分からないものには手をださない
意外にも売れ筋のファンドを見ると、中には仕組みが複雑でリスクの高いものがあります。投資家が理解し納得して選んでいれば良いのですが、勧められるがまま、みんなが買っているからという理由では自分に合わない商品を買ってしまい、こんなはずではなかったということにもなりかねません。分からないことは十分に確認しましょう。
ちなみにインデックスファンドは手数料が安く金融機関のもうけが少ないためか、熱心に売られることはあまりないようです。
みなさんもご自身にあった運用スタイルをみつけてみてはいかがでしょうか。
株式会社 住まいと保険と資産管理
ファイナンシャルプランナー 飯村 久美