みなさんは投資教育を受けたことはありますか?
実際に受けたことがあるという方は少ないのではないでしょうか。これから、しっかりと投資教育を受ければ投資に対する「理解不足による不安」がなくなり、長期のリターンを高めるために必要なだけのリスクも取れるのではないか、ということを述べたいと思います。
現在の日本の状況
日本は1996年以降の金融ビックバンにより、インターネットを通じて株式の売買ができるようになり、個人投資家は簡単に株式に投資することが可能になりました。
また、投資信託の商品多様化、銀行等投資信託の窓口販売の導入、証券デリバティブの全面解禁により、投資家は選択肢が拡大しました。
このことにより、インターネット取引口座数は、平成11年10月末では30万口座だったのが平成21年3月末では1,501万口座まで上昇しています。その理由は、窓口まで行かずに取引を行える手軽さや、手数料が安いからではないでしょうか。また、銀行窓販を利用する方も増えてきています。
しかし、国内投資信託の年代別取引高を見てみると、
30歳未満・・・2.4% 30歳代・・・11.5% 40歳代・・・19.4%
50歳代・・・22.6% 60歳代・・・27.9% 70歳代・・・16.2%
となっており、40歳代以上の取引が目立ち、特に60歳代が最も多いことが分かります。
なぜ若手の顧客層が少ないのか?
貯蓄から投資への流れがある中で、なぜ若手の顧客層は少ないのでしょうか?
4つほど理由があると思われます。
1. 投資を行う資産が少ない
2. 学校では投資について学べない
3. 長期投資インセンティブが弱い
4. 投資知識の不足
4つめの理由は、投資に対する興味がないのではなく、知識がないから、リスクをかかえるのが恐いということです。私は、「投資教育がしっかりとされていれば、若者は投資に対する意識も変わり、健全なリターンを目指すために必要なリスクを取れるのではないか」と思いました。
ここで、1つの例として、確定拠出年金に入っている方で、実際に投資教育を行った方々はリスク資産への配分は高まったのか、ということを「現代ファイナンス2009年 3月」を参考にし、見てみました。
確定拠出年金とは?
まず確定拠出年金とは何か?確定拠出年金とは、毎月一定の金額を個人ごとの口座に積みたて、その元本と運用益がその人の老後の年金となる制度です。2001年に導入されました。企業年金として導入されることが多く、その場合は企業が毎月決まった額を従業員の口座に振り込み、その従業員がその運用方法を決めるものです。
投資教育を行えばリスク資産への配分は高まるのか?
前出の「現代ファイナンス」では、実際に確定拠出年金に入っている方を、3つのグループに分けて、調査を行っていましたので、内容を紹介します。
1.投資教育に参加できない方を「教育なしグループ」。
2.参加できる方で、自宅での参加希望の方は「パンフレットグループ」。
3.集合セミナーに参加可能な方を、「セミナーグループ」としました。
参加できるグループの方には、具体的なリスクの種類や、リスクとリターンの関係性、長期投資の効果について、などの内容で投資教育を行いました。
そして、投資教育を行った後、3グループの方々に、「教育前のリスク資産配分」と「教育後のリスク資産配分」はどのように変わったかなどのアンケートを実施しました。
その結果、教育前と比べ、教育後のリスク資産配分は
「セミナーグループ」・・・6.5%上昇
「パンフレットグループ」・・・3.4%上昇
「教育なしグループ」・・・±0%となりました。
この結果を見て分かるように、集合セミナーにしっかりと参加した「セミナーグループ」はリスク資産の配分が最も高まったことが分かります。次に自宅での参加希望の「パンフレットグループ」が高く、
投資教育に参加できない「教育なしグループ」の方は全く変わらない状態でした。
このことから、投資教育をきちんと受ける機会が広がれば、株式や外貨を含むリスク資産にも一定の投資を行いたいと考える人も多くなると言えるのではないでしょうか。
最後に
投資教育の効果と重要性はわかっていただけたでしょうか。
投資教育を受ける環境を増やすことにより、若年層の投資に対する「理解不足による不安」がなくなり、リスク資産にも一定の投資をする方が増加するのではないでしょうか。私はこれからの日本経済を支える成長企業に個人投資家の資金がまわっていくためにも投資教育は重要だと思います。
株式会社 住まいと保険と資産管理
ファイナンシャルプランナー 高橋 明弘