私的に介護の備えをしている人は41.2%
2015年に向けて政府は段階的に消費増税の方針を打ち出しています。税と社会保障の一体改革、その改革案では財源不足が叫ばれる
医療、介護、年金、子育てなどの社会保障を充実させることを目的として増税分の使途を明示しています。世界に類を見ないほどの速度で高齢化が進む日本では、国民全体で長寿社会を支える必要が迫られてきました。皆が健康で長生きできる社会は理想的ですが、現実は理想どおりにはいきません。長生きのリスクとしてまず挙げられるのが「介護」のリスクです。要介護者の発生率は70歳〜74歳では6.2%ですが、年齢が上がるにつれ80〜84歳では27.7%、
85歳以上では56.9%となっています。(生命保険文化センター作成
平成22年1月データより)つまり85歳以上になると2人に1人が要介護状態になる見込みがあるわけです。
私達は老後の保障として年金をはじめ様々な備えを自助努力も含めて行っていく必要がありますが、上記データを見る限り、同時に要介護状態になるリスクにも備えておきたいところです。しかし、将来自分が要介護状態になった場合に備えて準備をしている人はどれくらいいるのでしょう。生命保険文化センターの生活保障に関する調査によると、
私的に準備をしている人が41.2%、準備をしていない人が半数以上の55.9%という結果が出ております。死亡保障や医療保障、さらには公的年金の不足感を補うための老後の保障などは比較的若いうちからでも積極的に準備をしているケースが見受けられますが、介護保障についてまでは十分に準備をしていないというのが現状のようです。
公的介護保険とは
では、介護保障の代表例としてはどんなものがあるのでしょう。まず一番に挙げられるのが2000年から導入された
公的介護保険制度です。仕組みとしては、40歳以上の全ての人が加入し介護保険料を納め、介護が必要になった段階で申請をし、所定の介護サービスを受けることができるというものです。65歳以上の人は「第一号被保険者」となり、理由を問わず要介護状態になったら公的介護保険サービスを受けられます。40歳〜64歳までは「第二号被保険者」となり、老化を起因とする16の特定の病気によって要介護状態になった場合に限り、介護サービスを受けられます。40代になると自身の親の介護が気になり、65歳以上になると自分または配偶者の介護が気になるというイメージが、保険料の負担層に重なりますね。
第一号と第二号の違いといえば、要介護状態に至るまでの理由の有無、そして第二号被保険者ではその理由に限りがある点といえます。たとえば第二号被保険者が事故などで介護状態になっても介護保険は利用できません。これは先に述べた16の特定の病気の理由により介護状態になっていないからなのです。
またこの介護サービスを受けるためには要介護認定を受けなければなりません。この認定は7段階に区分されていて、「要支援1〜要支援2」「要介護1〜要介護5」と分けられます。これら要介護認定を受けた人が、1割の自己負担分の利用料を支払うことで介護サービスを受けられるようになっています。
生命保険会社の介護保険とは
二番目に挙げられるのが
生命保険会社の介護保険です。一番目の公的介護保険が介護状態になった際のベースとして位置づけるのに対し、生命保険会社の介護保険は公的介護保険で不十分な場合を想定して、自助努力により補完するという位置づけとなります。
それでは、公的介護保険で不十分な場合とはどんなケースが挙げられるのでしょうか。どんな人が生命保険会社の介護保険に加入しておいた方が良いのでしょうか。その点についてご説明していきたいと思います。
まず、公的介護保険と生命保険会社の介護保険の違いについて確認していきましょう。大きな違いとしては、公的介護保険は介護サービスそのものが提供される
「現物給付」であって公的年金のような現金が支給されるものではないということ、対して生命保険会社の介護保険は保険金が支払われる「現金給付」という違いがあります。また、公的介護保険では要介護認定を受けることで介護サービスを提供されるのに対し、後者は生命保険会社の指定する所定の要介護状態になると保険金が受け取れるようになります。一見介護サービスそのものか現金かの違いはあれども、要介護状態になるという点では同じように見えます。ただし生命保険会社の場合あくまでも保険会社の定める介護状態であるということで、公的介護保険の要介護認定と必ずしも連動しているとは限らないということがあります。
将来、万が一要介護状態になった場合に、費用面でどれくらい必要なのかが気になるところかと思います。公的介護保険を利用したとして、介護サービスの1割相当分や公的介護保険の範囲外の費用がいわゆる自己負担分になります。この自己負担分に備えるには必ずしも生命保険会社の介護保険だけが手段ではありません。
貯蓄や年金なども含めて自己負担分にまかなえるか考えてみることが大事です。
参考までに実際に支払った自己負担分の介護費用として、
「初期費用など一時的にかかった費用の合計」が平均で86万円、「月額費用」が平均7.3万円という結果が出ております。(生命保険文化センター 平成21年度生命保険に関する全国実態調査より)これらの費用を一つの目安にして、家族構成や生活環境をイメージしながらどのように準備していくかを検討してみるのも良いかと思います。
生命保険会社の介護保険とは
生命保険会社では、こうした状況を想定して必要な備えを用意できる介護保険を用意しています。要介護状態になったら、まず部屋を改修したり介護用品を購入するなど、初期費用はまとまった資金があると助かります。これに合うのが
「介護一時金」が出るタイプです。在宅での介護であれば介護用ベッドを購入したり、手すりを設置したり、施設での介護を考える方には入居金にあてることもできます。
また、所定の要介護状態になってから継続的に受け取れる
「介護年金」タイプというのもあります。こちらは公的介護保険の自己負担の1割部分や利用限度額を超えるサービス相当の資金としても用立てられます。また、継続的に受け取る介護年金を、介護状態になったことから働けなくなるなど収入が減少した場合の補填として備える手段にも活かせます。介護年金タイプであれば、受け取る期間を選択することで保険料も変わってきます。介護状態が続く限り一生出る「終身タイプ」、または介護状態になってから10年間など期間を限定して保険を受け取る「有期タイプ」いずれかを選びます。
そしてこれら
介護一時金と介護年金を併用したタイプのものもあります。双方の給付金のメリットを享受し、要介護状態になった時に自己資金や年金をできるだけ取り崩さず、保険により経済的負担をほぼカバーすることを求める方には適しているといえます。
老化を起因とする不安の発生と健康に長生きできる未来を望むこと、二つが相反しながら私達は日々生きています。しかし
現実を知り、そこから具体的に対策、行動をとることで不安は大きく軽減します。介護の問題は「先が見えない」ことから不安につながっていますが、高齢化社会に突入した現実を踏まえて今は様々な対策が用意されています。
その中でも生命保険会社の介護保険は、経済的な負担を解決できる対策として有効な手段の一つといえるでしょう。
株式会社 住まいと保険と資産管理
ファイナンシャルプランナー CFP(R)
吉上 美枝子