2011年1月、5年固定の個人向け国債(第1回)の1兆461億円が償還を迎えました。続いて4月にも、同じく5年固定の個人向け国債(第2回)の9157億円が償還を迎えました。これら個人向け国債の金利は第1回債が0.8%、第2回債が1.01%と、直近の5年固定個人向け国債(2011年7月発行分の第23回債は0.52%)や定額預金(5年で0.08%)と比べると、ある程度魅力的な金利でした。
さらに、ゆうちょ銀行の定額貯金が4月に1兆円近く、7月にも2兆7434億円の満期を迎えるとされており、これらを合わるだけでも5兆円以上の大量の資金が、一旦投資家(貯金者)のもとへ戻ってくることになります。
この大量償還・満期の動きは今後もしばらく続き、毎年数兆円規模の資金が満期・償還を迎えることが分かっています。
じつは財務省はこの大量償還・満期に備えて、個人向け国債(10年変動)商品性の変更を行っています。
どのような変更を行ったかというと、一言でいえば「個人向け国債の金利を引き上げて資金をつなぎとめる」変更です。これまでの、10年変動の個人向け国債の金利の決まり方は、「市場の基準金利マイナス0.8%」でしたが、2011年7月の第35回債からは、「市場の基準金利×0.66%」に変更になりました。
この変更により、従来方式なら0.37%だったものが0.77%と、金利が高くなりました。
一方、銀行や証券会社の金融機関も、それを取り込もうと考えないはずがありません。何もしなければ、おそらくこのまま個人向け国債や貯金に預け替え、という事になりますので、数兆円〜数十兆円規模の大きな資金を呼び込むために必死になります。
個人金融資産の受け皿としては、今やすっかり毎月分配型の投資信託が定着しており、「高分配」「好分配金利回り」といった言葉で投資家の資金を呼び込んでいます。しかしながら、サブプライム問題・リーマンショック・ギリシャ財政問題などを経て、為替は円高基調をたどっており、これまで運用されてきた外国債券に投資をしている毎月分配型ファンドは、この円高の影響を受け元本の目減りを余儀なくされています。
これまで毎月分配型ファンドに取り組んできた投資家は、このような為替変動に疲れてしまっている側面もあり、これから始めようとするビギナー投資家にとっては、海外債券に投資をするファンドは、いくら分配金が魅力的と言われても尻込みしてしまうかもしれません。
もとより、これから大量償還・満期を迎える資金は、1980年代に8%の複利がつき10年間で2倍以上にもなり、しかも元本保証が付いている貯蓄が、満期になってもそのまま預け替えられるなどしてきたもので、元本の安全性をとても重視した性格をもっています。
そのような中、「元本の安全性は確保したいが、少しでも高利回りな商品が欲しい」という、本来矛盾する要望に対して生みだされたものが、いわゆるJボンドファンドでした。