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▼知らないと損する! 旅程保証制度って?
休みに入ると、旅行に出かける人も多いと思います。
ツアーなどでは、例えば、オーバーブッキング(過剰予約受付)により宿泊するホテルが変更になった場合、旅程保証制度という制度に基づき、変更補償金が支払われることがあります。どんな場合に支払われ、どんな場合に支払われないのでしょうか。
今回はその旅程保証制度(=リョテイホショウセイド。「旅程補償制度」や「旅程保障制度」という表記は間違い)について、みていきたいと思います。

1.旅程保証制度って?
「パッケージツアー」を企画した旅行業者は、当然計画に沿った旅行を実施する義務があります。しかしながら、「企画旅行業者の関与し得ない理由」により、内容を変更せざるを得ない場合もあります。
内容に重要な変更が生じた場合、旅行前であれば旅行者はキャンセル料を払わずにキャンセルをすることができますが、ツアー出発後だとキャンセル料を払わずに契約解除することができません。
また出発前にキャンセルをしたとしても、もともとの目的である旅行に行くためには他のツアーを探す必要がありますが、予定の日程でちょうどよいツアーが見つかる保証はありません。
企画旅行業者からすれば、本来「企画旅行業者の関与し得ない理由」によって内容の変更を余儀なくされているわけですから、直接的な責任はないのですが、申し込んだ側からすれば何とかしてほしいという思いがあるのは当然でしょう。
そこで、内容が変更になったにもかかわらず、そのままツアーに参加する旅行者に対してお詫び金の意味で「変更補償金」を支払う、というのが「旅程保証制度」です。
2.「旅行業者の関与し得ない理由」とは?
「旅行業者の関与し得ない理由」には、
・飛行機やホテルのオーバーブッキング
・地震や台風などの天災地変
・戦乱や暴動
などがあります。その中で「旅程保証制度」の対象となるのは、飛行機やホテルのオーバーブッキングなどです。天災地変や戦乱・暴動などは対象になりません。
ちなみに、「旅行業者に責任がある理由」で生じた変更については、変更補償金ではなく、損害賠償責任の問題になります。
3.どのくらい支払われるの?
変更補償金の支払いは、対象となる事由によって異なり、さらに旅行開始前と旅行開始後でも異なってきます。具体的には、旅行開始前であれば、事由によって旅行代金の1.0%、1.5%、2.5%の金額が支払われ、旅行開始後であれば、それぞれ2倍の金額(2.0%、3.0%、5.0%)が支払われることになります。
例を3つほど挙げてみましょう。
例1
「旅行代金20万円の「アメリカ周遊7日間の旅」というツアー、8月6日のA航空会社の飛行機で帰国予定だったが、翌日8月7日のB航空会社の飛行機で帰国することになった」
この場合、“帰国日の変更”と“航空会社の変更”という2つの事由について、
旅行開始前の場合
帰国日の変更の部分:20万円×1.5%=3,000円
航空会社の変更の部分:20万円×1.0%=2,000円 合計5,000円
旅行開始後の場合
帰国日の変更の部分:20万円×3.0%=6,000円
航空会社の変更の部分:20万円×2.0%=4,000円 合計10,000円
が支払われることになります。
例2
「旅行代金10万円の「沖縄4泊5日の旅」というツアー、書面に「海の見える部屋利用」と記載されていたが、海が全く望めない部屋に変更になった」
この場合、“書面に記載した宿泊機関の客室の景観の変更”が対象事由となり、
旅行開始前の場合:10万円×1.0%×4泊=4,000円
旅行開始後の場合:10万円×2.0%×4泊=8,000円
が支払われることになります。
例3
「旅行代金25万円の「直行便で行くドイツ8日間の旅」というタイトルのツアーで、帰国便が、直行便ではなく乗り継ぎ便になってしまった」
この場合、“ツアータイトルの変更”という事由について、
旅行開始前の場合:25万円×2.5%=6,250円
旅行開始後の場合:25万円×5.0%=12,500円
が支払われることになります。
なお、この場合、航空会社の変更も伴う場合には、例1に記載のとおり、その分の補償金も支払われます。
以上を見てお分かりのとおり、ツアータイトルに記載のあった事柄について変更があった場合の比率が一番高くなっています。
4.変更補償金が支払われない場合は?
例えば、C航空会社のエコノミークラス利用予定がD航空会社のビジネスクラスに変更になった場合、Aホテルのスタンダードルームの利用予定が、Bホテルのスーペリアルームに変更になった場合など等級が高くなる変更については支払いの対象となりません。
また、「皆既日食をみるツアー」や「オーロラをみるツアー」といった場合は、天候が悪く、目的を果たせなかったとしても支払い対象とはなりません。
天災地変、戦乱・暴動によるものについても支払われないのは、前述のとおりです。
さらに、変更補償金の合計額が1,000円未満であるときも支払われません。
5.さいごに
これまで述べてきた旅程保証制度は、標準旅行業約款に基づきます。
旅行業法において旅行業者には約款の制定が義務付けられていますが、そのモデルとなるものが標準旅行業約款です。多くの旅行業者はこの標準旅行業約款を適用していますが、独自の約款を作成し行政庁の認可を受けている旅行業者もあります。利用の際は、必ずその旅行業者の約款を確認しましょう。
また、もし旅行会社とトラブルが生じた場合は、(社)全国旅行業協会(ANTA)や(社)日本旅行業協会(JATA)などの相談窓口に相談してみると良いでしょう。
旅程保証制度による変更補償金は金額的には決して多額ではありませんが、多少なりとも予定が変更になった旅行を楽しい思い出にするためにも、知っていて損はない制度だと思います。
株式会社 住まいと保険と資産管理
ファイナンシャルプランナー 吉田 美帆
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このコラムで「旅程保証制度」についての理解が深まりましたか?
※以上は、独立系FP会社 住まいと保険と資産管理に所属するファイナンシャルプランナー
が執筆をして、2009年7月28日にMSNマネーに掲載されたコラムを一部編集したものです。
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