もしも保有中の投資信託に関係のある金融機関が破たんすると、私たちが投資しているお金はどうなってしまうのでしょうか? ※このコラムで取り上げるのは契約型の投資信託です。会社型の投資信託(REITなど)については異なる点がありますので、ご注意ください。

1.投資信託は、分別管理されている!
結論から言えば、金融機関が破たんしても投資資金が保護される仕組みがあるので、基本的には心配いりません。この仕組みを「分別管理」といって、金融機関は自らの資金とお客様の投資資金を分けて管理することになっています。これがどういう事なのか、少し具体的に考えてみます。
2.投資信託に関わる「3つの金融機関」
投資信託に関わる金融機関は、大きく3つの役割に分かれています。
販売会社(証券会社・銀行 等): 投資信託の販売窓口になる会社
委託会社(運用会社): 投資信託を設定し、実際の運用指示をおこなう会社
受託会社(信託銀行): 投資信託の運用資産の管理を担当する会社
私たちは、普段、証券会社・銀行などの販売会社を通して投資信託を購入しますが、投資した資金を管理しているのが受託会社(信託銀行)、実際の運用指示を出しているのが委託会社(運用会社)です。投資信託に関係のある金融機関を考える時、口座を開設して取引する証券会社・銀行だけでなく、運用会社や運用資金を管理している信託銀行も関係してきます。
3.もし、それぞれが破たんすると、どうなるか?
分別管理がされることで、販売会社・委託会社・受託会社が破たんした場合にそれぞれどうなるでしょうか。
<販売会社が破たん>
投資信託のペーパーレス化が平成19年にスタートしたことで、現在は投資信託の受益証券は発行されなくなり、証券保管振替機構を介した口座振替によって管理されています。
投資信託の仕組み上、販売会社はもともと顧客の資産(受益権)を管理していませんので、破たんしても「顧客の資産」に直接の影響は及びません。他の販売会社に預け替えをするか、その時点の基準価格で償還されることになります。
<委託会社が破たん>
委託会社は投資信託の運用を指示しますが、販売会社の場合と同じく顧客の資産を管理している訳ではありませんので、委託会社が破たんしても直接の影響を受けません。
委託会社が破たんした場合は、運用がほかの委託会社へ引き継がれるか、その時点の基準価格で償還されることになります。
<受託会社が破綻>
それでは、顧客資産の管理を担当している受託会社が破たんするとどうなるか?受託会社になっている信託銀行には、「金融機関のお金」と「顧客のお金(受益権)」を分別管理することが義務づけられています。そのため、信託銀行が破たんしても顧客の資産(受益権)そのものは保全され、顧客の資産は他の信託銀行に業務が移されるか、その時点の基準価格で償還されることになります。
ここまで見てきて、販売会社・委託会社・受託会社いずれの場合にも共通する点として、
@「金融機関のお金」と「顧客のお金(受益権)」が切り離されていることによって、金融機関が破たんしても、顧客の運用資金は保全される。
A運用はそのまま継続(他の金融機関が引き継ぐ)されるか、その時点の基準価格で償還される。
ということがわかります。
4.投資者保護基金による保護 & まとめ
ここで、証券会社の破たんについては、もうひとつのセーフティネットがあります。
それは投資者保護基金による補償で、証券会社はこの投資者保護基金への加入を義務づけられています。
証券会社が破たんした際に、証券会社が顧客のお金をきちんと分別管理していなかったり、分別管理をしていても何らかの事情で顧客が自らの資金を取り戻せないケースを想定し、そのような場合でも、投資家は投資者保護基金から一人当たり上限1000万円までの補償を受けることができます。
いかがでしたでしょうか。投資信託を通して資産運用をおこなう時、ご存じのとおり基準価格の変動には保証はありませんが、投資家の投資資金は、金融機関が破たんしても(原則)守られる仕組みがあります。このような“万一のための知識”も、一度確認して損はないと思います。
株式会社 住まいと保険と資産管理
ファイナンシャルプランナー 千葉 悠介