今はまだ、世界中が不況です。その結果、給与の削減やリストラ、会社の倒産などが起こり、世の中は厳しい状況になってきています。 描いていた人生設計を実現するためのキャッシュフローの厳しくなる方が、増えてくるのではないでしょうか? そして、収入の増加がなかなか見込めなくなる分、まずはムダな支出を減らしていくという姿勢が必要になります。
その実行の一番初めとして考えられるのが、保険の見直しです。そこで、保険見直しに必須の知識という観点から、意外と多い公的保障(遺族年金等)の案内をいたします。
1.遺族年金とは 遺族年金とは生計を維持されていた遺族に支給される公的年金です。
遺族年金には、遺族基礎年金、遺族厚生年金、遺族共済年金の3つがあり、どの年金を受け取れるかは、亡くなった人の職業によって異なります。自営業世帯(国民年金)は遺族基礎年金のみでサラリーマン世帯(厚生年金)と公務員世帯(共済年金は)遺族基礎年金と遺族厚生年金が受け取れます。
遺族基礎年金は、子どもが18歳の年度末まで受け取れる妻や子に対する育成援助金の意味合いをもつ年金です。
遺族厚生年金は、夫がもらえるはずだった厚生年金の3/4相当を遺族がもらえる年金で、夫が亡くなって以降終身受け取ることができます。
遺族共済年金は、公務員世帯の年金で遺族厚生年金と支払い要件は同じですが、より遺族厚生年金よりも手厚い保障となっています。
その他に中高齢寡婦加算という遺族厚生年金と遺族共済年金につく加算があり、遺族基礎年金がもらえない一定の妻が老齢年金が受け取れるようになるまでもらえる加算金があります。
2.年金額と支給対象者 また、遺族年金をもらえる遺族の範囲も年金の種類により異なります。
遺族基礎年金の遺族の範囲は、 (1)子ども(18歳到達年度の末日まで)のいる妻 (2)子ども
遺族厚生年金と遺族共済年金はその範囲が広がり (1) 妻、夫、子ども (2) 父母 (3) 孫 (4) 祖父母 (子どものいない妻ももらえる、妻を除いて年齢条件あり) となり結果として、自営業者(国民年金)の方の場合はサラリーマン世帯や公務員世帯の方に比べ遺族年金の受取は少なくなります。
例えば、夫35歳(サラリーマン)、妻30歳(専業主婦)、第1子 5歳、第2子 2歳の4人家族の場合、夫が亡くなると、遺族である妻が受け取れる公的保障は、
(1)遺族基礎年金:子どもが18歳の年度末まで受け取れます。 ※18歳の年度末までの子どもが2人の期間(約13年間)は年間1,247,900円、18歳の年度末までの子どもが1人の期間(約3年間)は年間1,020,000円支給されますので、 1,247,900円×13年+1,020,000円×3年=(1) 19,282,700円
(2)遺族厚生年金:終身受け取れます。 ※標準報酬月額にある算式を掛けた金額 (標準報酬月額を30万円、総報酬制導入後35万で計算した場合、年間約48万円弱受取れます) 仮に妻がこれから60年間(90歳まで)生きるとして 48万円×60年=(2) 28,800,000円
(3)中高齢寡婦加算:遺族基礎年金をもらえなくなる以降65歳まで受取れます。 ※年間594,200円×(65歳―お子様が18歳の年度末を過ぎた後の妻の年齢) 594,200円×(65歳―46歳)=(3) 11,289,800円
上記3つの遺族保障のほかに
(4)妻自身の老齢基礎年金:65歳以降、終身受け取れます。 ※年間792,100円×納付月数/480月 満額支払ったとして 792,100円×(90歳―65歳)=(4) 19,802,500円
のトータル4つの公的保障があります。
全てを合計すると (1)+(2)+(3)+(4)=(5) 79,175,000円 とこれだけの金額を一生涯で受け取ることができるのです。
これ以外に遺族である妻は、子どもがある程度大きくなったら働くという選択肢を考えられる場合が多いのではないでしょうか?
仮に下の子どもが12歳になった40歳から60歳までの20年間、年間180万円(月15万円)くらいのパート労働をした場合、180万円×20年=(6) 36,000,000円
全てを合計すると (5)+(6)=11,517,500円
なんと1億1,517万500円もの総額になります。
今掛けている生命保険を、この遺族年金額等を考慮し見直してみると、減額できる方がたくさんいると思います。
3.保険か貯蓄か
死ぬリスクよりも生きるリスク(生きてかかる支出のリスク)に備えて、貯蓄を増やすことを意識したほうが良いかもしれません。
貯蓄が増えれば、その分また生命保険を減らせます。(注:国民年金だけの自営業の方は、公的保障が少ないですので その分サラリーマンよりも民間の生命保険に頼る必要があります)
その意味でも、万一の場合に自分の遺族にはどのくらいの公的保障があるのか? といったことを一度確認されるのをおすすめいたします。
株式会社 住まいと保険と資産管理
ファイナンシャルプランナー 塩川 卓司
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