【主婦FPが語る】いまどきの生活のしくみ


● 『備えあれば、「マネー」なし』?
◇ 5/22 ◇ 高原育代(AFP)

 毎日、入れかわり立ちかわり、さまざまな事件や事故が報道されています。 その中には、私たちの誰にでも、いつ降りかかってくるかわからないようなものも よくありますね。

 こういった、自分や家族の身、あるいは持ち物に対して、起こってほしくないけれ ども起こる可能性があるものを“リスク”といいます。 現代は、この起こりうるリスクというものについて、考え出したらキリがないと いっても過言ではないかもしれません。

 それでも、『備えあれば憂いなし』という格言もあります。 備えることで、心配しなくてすむのなら、あるいは備えがあれば、万が一そのリス クが発生してしまったとしても被害を減らすことができるのなら、と考えて、人それ ぞれに、さまざまなリスクに対して、日頃から『備え』をされていることでしょう。

 さて、「地震」というのも、そんなリスクの1つだと思います。 いっとき、日本のあちこちで地震が起こっていたときには、小さな余震を感じるた びに、「次は、自分の住んでいる地域かも…」と思っていた私も、最近は関心が薄れ ていました。

 が、ある一本のTVコマーシャルが目に留まり、“リスク”への備え方をもう一度 考えてみることにしました。 そのコマーシャルは、ある会社の「家屋補強システム」というものの宣伝でした。 「地震や強風などから家屋を守るためには、揺れに対する補強が大切」ということ で、既に建っている家の柱や梁、つまり基礎の部分を、特殊な金具をとりつけて補強 しようというもののようです。

 ある“リスク”というものに対して備えをする場合には、いくつかの方法がありま す。

 最初にするべきことは、もともと起こってほしくない“リスク”をいかにして発生 しないようにするか、ということでしょう。 ただし、地震の場合、「ゼッタイに起こらないようにする」なんていうことはでき ませんし、地震が起こらないという場所に住むこともムリですよね。

 そこで、次なる備えを考えることが必要になってくるわけですね。 “リスク”に対する備えということで、みなさんもよく利用されている方法が「保 険に加入する」というものでしょう。

 ところで、保険でできる備えというのは、どういうものでしょうか。

 実際に、リスクが起こってしまった場合の、そのあとのことが対象です。「経済的 な損害の穴埋め」に関わることになります。 地震に関していえば、地震保険に加入するのは、地震で家が倒壊してしまった場 合、もう一度家を建て直すお金を保険でまかなってもらうためでしょう。

 家というものは、財産の中でも高価なものですから、失ってしまったときの経済的 な損害は大変なものです。保険は、経済的な穴埋めをしてくれるのですから、地震保 険が、リスクに対する備えとして、大きな選択肢であることはまちがいがありませ ん。

 ただし、実際に加入するとなると、その保険料は地域にもよりますが、安いものと はいえないようです。また、「地震保険」には、特殊な条件などもあり、単に火事に 備える「火災保険」に加入するようなわけにもいかないともいえそうです。

 「家屋補強」のコマーシャルを見ていて思ったこと。 それは、倒壊したわが家を立て直すための、お金に対する備えを「地震保険」で得 るというのも1つの方法だけれども、「家が地震で倒れないようにする」という備え も1つの方法かもしれないな、ということでした。
今から家を建てるという人が、地震という“リスク”に備えるのなら、耐震性の高 い建物にするという方法をとることもできます。

 でも、大方の人は、もう今建っている家に住んでいるわけですから、今からでもで きる備えの方法でなければなりません。 「倒れてしまったあと」への備えも大切ですが、「倒れないようにする」備え方と いうのも、1つの方法かもしれません。

 ちなみに、私は、このコラムで、その「家屋補強」サービスを特別に薦めるつもり はありませんし、善悪を判断しようというものでもありません。 “リスク”に備える選択肢の考え方のヒントとしてもらえたら、ということです。

 ところで、「地震保険」にしろ、「家屋補強」にしろ、こういった備えをするに は、それ相当のお金がかかることは事実です。 地震を一例としましたが、身の回りの“リスク”を考えて、その1つ1つに備える ことは大切なこと。でも、「備え方」の選択肢を幅広く持たなければ、『備えあれ ば、「マネー」なし』となってしまうかもしれません。

 最後に。
 万が一、不幸にも大地震にあってしまったとしたら、その直後に必要な「最低限の 水や食料、衣類や薬、懐中電灯やラジオ」といった非常持ち出し品袋を準備しておく ことなら、誰にでもできる「備え」かもしれません。 もちろん、その置き場所の工夫や、中身の期限を点検し、入れ替えをすることもお 忘れなく。

 保険や家の補強になら、高いお金を払うのに、こういったことにはついお金を出し 渋ってしまうことってありませんか?