【主婦FPが語る】いまどきの生活のしくみ


● 『「捨てる!」技術』と激安フリース
◇ 11/28 ◇ 鹿野さち子(AFP)

 やっと読めました。

 図書館で予約を入れ、根性で5人待ちをして辰巳渚著『「捨てる!」技術』を読んだ んです。 ベストセラーになるちょっと前から書店で立ち読みしていたのですが、買っ てもどうせ捨てるんだったら・・・と節約していました。

 『「捨てる!」技術』は「後ろ向き」に考えられがちだった「捨てる」という行動を 「前向き」に考え、またそれを「技術」として感情から一線を引いた領域でシステマ チックに行おうと提案していることが現代人の共感を得たのだと言われています。

 大量生産・大量消費の時代は終わったといわれて久しいこんにち。別に収入が減った わけでもないし、株で損したわけでもないけど、「ものが増えて困る」と思っている人 たちがものを買わなくなりました。それが今回の消費不況の一因でもあるも言われてい ます。

 結婚よりも離婚にエネルギーが必要なように「買う」より「捨てる」ことの方がたい へんなお仕事なのです。

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 さて最近、鹿野サンは例の1900円のフリースを買いました。昨年までは「やすも の過ぎてちょっと恥ずかしいよね。」とバカにしていたのですが、木村佳乃がドラマの 収録の合間に着ているのをテレビで目撃して、どうしても彼女のようなピンク色が欲し くなったのです。

 カジュアルショップの売場では老若男女入り乱れて自分色のフリースを探していまし た。そこでこんな声を聞きました。

「この値段なら1年で着つぶしても惜しくないよね。」

 その時気づきました。「この人達は買う時点で、それを“捨てる”ことも考えている んだ!」

 そういえば私も、「一生ものですよ」とか「これなら流行に左右されませんか ら・・・」と店員にだまされ、タイマイはたいて買った洋服ほど数回しか着ずにお蔵入 り。そしてリサイクルショップ行き。最後には「高かったのに・・・」と嘆きながら涙 をのんで捨てる。そんな経験一度や二度ではありません。

 日本の国民はもうこんな目に合うのはうんざり。そんな背景もありこの激安フリース が大流行したのではないでしょうか。

 そもそも、このフリースの正体は、みんなが“捨てるところ”を分別して集めたペッ トボトルなんです。(そうじゃないものも多いということですが。)そんなことも「捨 てたって惜しくない」理由の一つだと思います。

 『「捨てる!」技術』は単なるノウハウ本ではなく、消費不況の中でも支持される商 品を暗示してくれていたのでした。

 バブルに踊り、大震災で人工的に作られたモノの“はかなさ”を経験して、平成の 大不況でいくつもの大企業が壊れる姿を見た我々は「モノ選び」に関してちょっぴりか しこくなったのです。

 モノを供給する側は「かしこくなった消費者」のニーズをうまくくみ取れるかどう か、そのへんが勝負どころだと思います。

 フリースに続いて、「買ってから捨てるまで快適な商品」が21世紀もたくさん生ま れ、消費不況が少しでも良い方向に向かうことを祈ります。

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 さて、今このピンクのフリースを着てパソコンに向かっています。スポーツ前の ウォーミングアップ時に、ジャージー代わりに着ようと思っていたのですがその軽さと 暖かさに、今じゃ朝起きたときも、お風呂上がりも、手放せない状態。着つぶすつもり で買ったのに来年も着ていたらどうか笑ってやってください。

 あそうそう。あれから『「捨てる!」技術』買いました。680円というのもお手頃価格 にも納得!