【主婦FPが語る】いまどきの生活のしくみ


● 脱貧乏性のススメ 〜 “山崎えり子”より“中村うさぎ”な生活を
◇ 6/26 ◇ 鹿野さち子(AFP)

 山崎えり子さんの「節約生活のススメ」を読むと「私は貧乏性でものが捨てられない・・・」というような記述が何カ所か出てきます。

 広辞苑によると「貧乏性」というのは「ゆとりのある気分になれない性質」とありました。

 ローンをしっかり返し、おまけに印税がっぽり稼いだ山崎さんは決して「貧乏」ではないんでしょうが、今でも「節約生活」を続けているようです。彼女にとっては、工夫を重ねて手間をかけ、無駄なものを買わない、ものを捨てない生活が楽しんだからそれはそれですばらしいこと。彼女こそ“元祖節約のカリスマ”たるべき人だと思います。

 さて、今まであまり「お金で苦労したこと」のない私なんですがこの3ヶ月は我が家の収支は赤字続きでした。原因を突き詰めてみますと、2月から5月にかけて洗濯機、掃除機、デジカメ、プリンター、ロングコート、ファクシミリ、etc・・・。極めつけに予定よりも2年早く夫の車を買ったからです。さすがに車はキャッシュで買いましたが、その他のものは全部カードで買っていたので毎月びっくりするような金額の請求が来て口座はいつも空っぽに近い状態。たぶん生まれて初めて経験する「貧乏状態」でした。

 「FPたるものがこんなんじゃ失格よ!!」なんて思わないでください。

 私、金曜日のコラムを書くために結構一生懸命に日経なんぞを読んでいろいろ乏しい脳みそで考えていたのです。「どうして日本経済がよくならないんだろう? みんな一生懸命働いているのに・・・」

 どう考えても今の日本は「デフレスパイラル」。我が家の収入も不況のあおりを受けて今期はかなり減りました。どこでこのスパイラルを絶ち切ることができるでしょうか?

 答は簡単。ものが売れないから値段が安くなるんです。だったらものが売れればいいんじゃん!

 そこで無謀にも、“ものが売れる状態”を家庭レベルで作ろうとしたのです。鹿野家は今買っておきたいものを全部買いました。しかも「買っておしまい」ではありませんでした。車やデジカメ買うとなんだか家族で遠くにお出かけしたくなりますし、買い物にも行きやすくなってしまいました。足が便利になったので子どものおけいこごとも増やしました。消費が消費を生む結果にもなったのです。

 電気製品なんかは、その時買った値段よりも2,3ヶ月経ってさらに安くなっています。でもその3ヶ月間気持ちよく使えたんだからいいんじゃないでしょうか?

 車だって10年前に買ったときは全く同じ金額で2ランクほど下の車しか買えませんでした。「この機能でこの値段」と思えば我が家が買ったものはどれもこれも決して高い買い物ではなかったようです。

 「急性貧乏」を経験して思いました。あら「貧乏」っていろんなことが出来て結構快適。洗濯用のお湯はお風呂から付属ポンプで汲んでくれるし、雨の日でも車で楽々お出かけ。それに「去年の服じゃなくてこれはどう見ても今期モノでしょ」と思うとお出かけも楽しくなります。「貧乏」なのになんだかうきうきした気分になれる!

 今まで「お金がかかるから」とセコセコガマンしてたなんて私ってなんておバカな「貧乏性」だったんでしょう!

 世間では小泉政権が具体的にどのような対策で構造改革に着手するかに最大の関心が集まっています。しかしGDPの60%を占めるのが個人の消費。個人の意識を変えない限り、どんな構造改革が決まってもデフレスパイラルからの脱出は難しいのではないでしょうか? 「あなた自身が“貧乏性”から脱すること」が日本を救う唯一の処方箋かも知れません。

 あなたの生活を、根本的により快適にするカギは「節約の女王山崎えり子」ではなく案外「ショッピングの女王中村うさぎ」の本の中にヒントがあるのではないでしょうか。

★中村うさぎ・・・ブランド好きが興じてエルメス、シャネルなどを買いあさり、カードローン地獄、住民税の滞納額800万円(記憶が正しければ)にまでなってしまったファンタジー作家。最近はブランド評論家、貧乏評論家。(一般人がここまでになったらおしまいですが・・・。)


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