【主婦FPが語る】いまどきの生活のしくみ


● 勝手に想像した信託報酬の裏事情
◇ 4/10 ◇ 栄田育子(CFP)

 最近マネー雑誌で投資信託を取り上げているページのどこかに必ず書かれて いることがあります。それは、「信託報酬が低いものを選ぼう」です。

 信託報酬とは、一言でいえば投資信託を作って売る側の収入になるもので、 目論見書や投信を紹介するホームページに「年1.5%」などと表示されているも のです。単純にいえば、「年1.5%」の信託報酬の投信に私たちが1万円を投資 したら、150円は投資されずにその投信を作って売る人たちの収入になるわけ です。そして、これは私たちがお金を投資している間ずーっと続きます。先の 例で1万円を10年間投資すると、1500円は差し引かれちゃうというわけ。

 実際にはマーケットの変化に応じて資産額が変わるという理由で、こんなに 単純な計算には多分なり得ませんが、例をわかりやすくするためだとご理解く ださい。ともあれ、預金の金利が0.x%なんてご時世ですから、年1.5%という率 は決して低くないということがわかるでしょう。いい替えれば、この投信の場 合年1.5%以上の利益を毎年出していないと事実上儲かっていないわけです。

 ところが、ここ数年設定されている(投信の場合新しいファンドを出すとき は「設定する」といいます)投信は、概してこの信託報酬が高めです。1%以下 というものはまれで、1.8%なんてものも珍しくありません。

 仮に信託報酬比率が高かったとしても、それ以上の利益を得られるような実 績を残しているなら、気にする必要無いかもしれませんが、残念ながら最近は 余り無いと思います。

 冷静に考えると、ここで一つの事実に気がつきます。
 投資した人が儲かっていなくても、投信を作って売る側には継続的に収入が 入っています。もちろん、その収入が全部丸ごと投信会社などの利益になるわ けではありません。組入れている有価証券の売買手数料や、運用報告書を作る ためなどに使われているわけです。

 でも、株式の売買手数料が自由化されて、一般的には安くなっているはずだ ということを考えると、こと株式投信に関しては信託報酬が低くなってもいい はずだと思うのです。でも、そのような話は余り聞きませんよね。

 そこで、栄田が最近気づいたことがあります。もしかして、高い信託報酬と 安くなったはずのコストとの差額はヒト集めの手段に使われているのではない かと。

 最近の投信会社は、より良い運用をできるファンドマネージャーや、より良 いPRをするためのマーケティングを出来る人たちなど、優秀な人材を常に求め ています。いくらIT化が進んだとしても、人間の手に頼らなければいけない部 分がたくさんあるわけです。

 当たり前ですが優秀な人はそれなりの報酬が無いところでは働きたくありま せん。したがって、優秀な人材が欲しい投信会社はたくさんの報酬を払えるよ うな会社でなくてはいけません。何もしないでその原資を稼ぐことは出来ませ んから、その費用を稼ぐための手段の一つとして高い信託報酬を設定している のではないかと思ったのです。

 これはあくまでも栄田個人の想像ですから、真偽のほどは定かではありませ ん。ただ、このような私たちには直接見えない事情を自分なりに仮定して投資 先を決めることは、結果的に自分が納得できる投資になると思うのです。

 投資で一番やってはいけないことは、「理解せずに投資すること」です。
 正直言って日本では、販売する側の知識が足りないことも事実ですから、投 資するときに理解できないのも致し方ない部分があるとは思います。でも、正 しく伝えていない人から買ってしまったとしたら、それは買った側にも責任が あります。自分なりに理解しようとする努力をすることは、その次の投資に必 ずや、生きてくるでしょう。