【主婦FPが語る】いまどきの生活のしくみ


● 「生保ババ抜き」いつまでやるの!?
◇ 10/24 ◇ 高原育代(AFP)

 日産、東邦、第百、大正、そして、千代田。実に5つの生命保険会社がつぶれてしま いました…という内容でコラムを途中まで書いていたら、またもうひとつ、協栄が仲 間入りして6つになってしまいました。

 私の身のまわりにも、この立て続けの生保の破綻に関係する人たちがいます。

 新しく知り合った勤め先の人から、「じつは、千代田の個人年金に入っていて、 ショック。どうしたらいいのか…」と破綻してから、相談を受けました。

 また、つい1カ月前ぐらいに、ボランティアでやっている京都生協の保障アドバイ ザー活動で、生保の見直し学習会をした方のなかに、協栄の契約がいくつもある方が おられました。
 「協栄は、格付けも低いので、他の会社や共済などに分散することも考慮されて は…」とアドバイスしました。しかし、伺ってみると、その方のお父様が協栄に勤務 されていた経緯などがあって、解約や変更をためらわれていたようでした。 「格付けが低いといっても、そうそうすぐにつぶれることはないでしょ」とおっ しゃっておられましたが、今回のニュースにショックを受けられているのでは、と心 配です。

 まったく、ひとむかし前まで生保が「つぶれる」なんて予測もできなかった事態です よね。だから俗に“GNP”と呼ばれるような“義理・人情・プレゼント”の板ばさみ になって生命保険の契約書にハンコを押してしまっても、たいしたことにはならずに すんできたのでした。

 でも、大して考えもなく契約してしまった保険に、まだ何十年も先の将来を託して ずっと続けていていいのでしょうか。 現実に、今までつぶれてしまった会社との契約をしていた人にどんなことがふりか かっているか、新聞やその他の報道で目にしながらも、まだ他人事と思っていません か。

 カードを一枚引いて、それがジョーカーではなかったことにひとまずホッ。そのう ち、ダレかがジョーカーを引き当ててしまったのを横目でみながら、自分じゃなくて よかった…と思う間に、また自分の番がまわってくる。

 生命保険の契約を一つでも持っている人は、こんな「ババ抜き」に参加している状態 に例えることができるような気がします。 生保会社がつぶれるたびに、そのことを載せた新聞やニュースを読む瞬間は、カード を引き抜いたときに似た気持ちではないでしょうか。

 「助かったぁ」「あぁぁ、やっぱり…」そんな声が聞こえてきそうです。

 このババ抜きの恐ろしいところは、「ババ」を引いた人がどんどん増えてきているこ と。そうです、「ババ」が1枚ではないどころか、何枚あるのかダレにもわからない ことなのです。

 しかも、いったん「ババ」を引いてしまったら、それは「自己責任」です。 ゲームに参加していたのも自分だし、「ババ」であるカードを引いたのも自分。 ですから、その後に「罰ゲーム」も課せられてしまいます。 こんなルールに納得ずくなら、ゲームを続けていけばよいと思います。

 ただし、「もう、これだけつぶれたんだし、一件落着。これ以上はつぶれないよ」と いうもっともらしい話を、何の根拠もなく信じようとしているのなら、要注意。

 確かに、契約している保険会社の人が、「ウチは、この前つぶれた○○のようにはな りません」と言いにやってきたかもしれません。 でも、その人たちだって、もう残りのカードに「ババ」が入ってはいないと“信じて いる”だけではありませんか。彼らは、本当に残りのカードの中身を知っているので しょうか。

 ‘残りのカードに「ババ」が何枚あるかがわからないようなゲームに納得がいかない !’とか、‘今度は、どうも自分が「ババ」を引いてしまいそう…’と思ったら、 「いーちぬけたぁ」っていう方法をとることもできます。

 ただし、この場合のポイントは、「ババ」を引いてしまう前であること。 知り合いの、千代田の個人年金に入っていた人にも、残念ながらもう今となっては、 とりあえず待って様子をみるしかない、としか言えませんでした。

 生命保険の「契約」というものは、万が一の時のため、とかずっと先の将来のためと か、不確定な事態のために備えておく目的があります。その何十年もの間、おつきあ いをしていかなくてはいけない生命保険会社自体が「不確実」では、本当に困ったも のです。

 自分が選んでおつきあいしている会社が「ババ」になりそうではないか、今のうちに できることがないか、他人事ではなく、もう一度立ち止まって考えるときかもしれま せん。