【主婦FPが語る】いまどきの生活のしくみ


● それでも家を買いますか?
◇ 2/27 ◇ 鹿野さち子(AFP)

6年前我が家は親の持つ大阪府の土地に結構広い家を建てました。夫 は一般的なサラリーマンですのでもちろんローンを組んでのことです。 それまで、月1万円の社宅(超ウサギ小屋)住まいをして住宅財形で がっちり貯めたので建築費の半分は貯金でまかなえました。また「住宅 資金贈与の特例」も利用させてもらったので借り入れは家の取得にか かった費用の5分の1で済みました。

 はたから見ると、そんなに苦労しなくても家がもてた理想的な家庭 だったようです。しかし・・・夢の一戸建ても「夢」であったときが一 番幸せでした。

 実際住んでみるとちょっとエコノミーに建てたぶん、いろいろと住み にくいところが出てくるのです。まず寒い。吹き抜けなんぞ作ったのも 悪かったし、リビングをだだっ広くオープンにしたので暖房の効率が悪 いのです。石油ストーブは使いたくないのでガスや電気を使い冬場は暖 房費が月2万円かかりました。

 反対に夏は2階が蒸し風呂。プレハブ(パネル)住宅だと仕方がない のかもしれませんが、冷房なしでは1分も居られない状態でした。

 近所の人はたいていは気の合う子育て世代だったのですが、唯一ひと りぐらしのへんくつバーさんがいて「これからずっとつきあうの?と思 うとうんざり。「隣組」という時代錯誤の組織も健在でした。

 ふだんの生活でも子どもが階段から落ちないかとても気を使いました し、庭の手入れも、雨戸の開け閉めも赤ちゃんを育てながらのことで非 常に苦痛でした。それに四角い部屋を丸く掃くような性格の私です。5 つも6つも部屋があること自体がストレスでした。

 さて、マイホームに住んでから4年後に夫が転勤になります。はじめ は「この家を離れるのはいやよ。子どもにもせっかくお友達ができたの に。パパひとりで行ってよ。」ととてもいやでした。

 しかしよく考えると「この家に来てから私に余計な仕事(そうじとか 庭仕事)が増えたし、子どもの教育にとっても最適の環境とも言えな い。パパを単身赴任させても食事とかにお金がかかっちゃう。この際借 り上げ社宅にでもだしちゃおうか?」

 そんなとき、近くに住む従姉(独身)が「事情があって大家さんに追 い出されるかも知れない」という相談に来ました。・・・「それならこ の家、月5万で貸してあげるよ。その代わり少しモノを置いてかせて ね。」(☆実際の相場よりも著しく低いのですが管理してもらうという 条件付きです。)

 こうして「ストレスのたまるマイホーム」は年60万円(固定資産税 でずいぶんぶっ飛びますが)の収益を出してくれる資産になりました。 残っていたローンもなんとか完済。今は地方ながら会社の借り上げてく れるマンションで快適に過ごしています。マンションはどの部屋にいて も子どもに目が届くし、寒さ暑さもずいぶんまし。借りたものと思うと 部屋の掃除が多少おろそかでも気になりません。都会に比べて自然も多 く子ども達にも申し分ない環境です。

 従姉もリビングをワンルーム状態にして快適に住んでくれています。 私がいた頃よりも庭の花がずいぶん増えました。

 「あこがれのマイホーム」には、思わぬリスクが潜んでいます。

 値下がりのリスクはもちろん、転勤のリスク、近所の人との折り合い とか教育など環境のリスク。シックハウス症候群なんてこともよく聞き ます。リスクだけでなく光熱費やガーデニング、メンテナンスなど思わ ぬ「コスト」も。

 我が家の場合はあまり参考にならないかも知れませんが、はっきりと 感じたのはローンの利息や固定資産税の金策に悩みながら「マイホーム の管理」に追われる生活よりも、賃貸に住みながら、年間わずかでも収 益を生んでくれる資産を持つ方が「私にとっては快適」ということでし た。

 金融関連商品も、オープン型投資信託、確定拠出年金、掛け捨て保 険、など「ポータブル」「フレキシブル」が主流時代。ライフスタイル に合わせて自由に持ち運びできない「マイホーム」を今買ってしまって もいいものか?

 住宅ローン減税の駆け込みでマイホーム計画を立てている人などはも う一度考えてみてはいかがでしょうか?