【主婦FPが語る】いまどきの生活のしくみ


● 雑誌の呪縛
◇ 1/16 ◇ 栄田育子(CFP)

 「呪縛(じゅばく)」。
 私の手元にある三省堂の国語辞典によると、「まじないをかけて動けなく すること」だそうです。

 いきなり難しい言葉を出してしまいましたが、ここで読むのを辞めないで ください。今日は雑誌のお話です。種類こそ違っても、どんな人でも毎月1 冊ぐらいは目を通すと思います。かくいう私も、雑誌は大好き。本屋に入っ てあれこれ眺めているのは楽しいです(本屋さんごめんなさい)。

 1月も中旬に入り、そろそろお正月ボケもなくなってくる頃、本屋の女性 誌のコーナーには、ある言葉が判で押したように並んでいます。
 何だかわかりますか?

 "ダイエット" です。

 「春までに3Kg」とか、「今年こそ」とか、「ダイエット」を修飾する言 葉こそ違いがあるものの、気がつくと毎年この時期の女性誌の表紙にはこの 言葉が書かれているような気がします。

 考えてみれば、12月はやれ忘年会だ、クリスマスパーティーだと、さんざ ん飲み食いし、年末年始は、そばだ、お餅だ、おせちだとまたよく飲み食い するわけです。お正月が過ぎて、体重計に乗るのが恐ろしいなと思う頃、女 性誌は女心をくすぐってくれるわけですね。うまく出来ています。

 で、ちょっとがんばってダイエットに成功した頃、女性誌は春の服の特集 を組んだりして、今度は買い物魂に火をつけてくれるわけ。そして春が終わ る頃には、水着の特集が組まれます。日本の女性の消費意欲を掻き立ててい るのは雑誌だと言っても過言ではないでしょう。

 あなたも経験がありませんか?
 雑誌を見て、「この服欲しい」と思って買ったり、「ここへ出かけてみた い」と思って旅に出たりしたこと。 きれいなグラビアは私たちにまるでおまじないのように、お金を使わせる 動機をくれます。雑誌って罪な存在ですね。

 ところで、雑誌を発行して得られる出版社側の収入にはどんなものがある かご存知ですか?

 もちろん雑誌自体の売上も大きな割合を占めるはずですが、もう一つの大 きな収入は広告です。雑誌によっては、この広告収入のほうが多く、中には あまり売れなくても、赤字にはならないという雑誌があるのだとか。言われ ると気がつく人もいると思いますが、広告ページが妙に多い雑誌ってありま すよね。

 雑誌を創刊するときは、大体読者層を絞ります。例えば、30代の働く女性 とか、主に家事で1日を過ごす女性といった具合です。同じように、モノやサ ービスを提供する企業も、客層をある程度想定してつくります。

   雑誌の読者と、企業の客の層が一致するような広告を雑誌に出せば、場合 によってはテレビCMより有効な広告になりますね。つまり、私たちにとって 情報収集源である雑誌は、企業側にとっては広告媒体の一つなのです。

 私たち消費者が、雑誌を買って、掲載されている広告や記事にあるモノや サービスを買えば出版社も広告主もハッピーになる。 最近の雑誌はこんな仕組みで成り立っていると思います。

   このような雑誌の戦略を批判するつもりはありません。 ただ、賢い消費者としては買って読む雑誌を選別するべきだと思うのです。 面白そうだと思って闇雲に買ってしまうと、特に女性雑誌はお金を使いた くなるものがたくさん掲載されていますから、結果として無駄遣いを招いて しまうと思うのです。

 それに、いくら単価が安い雑誌でも闇雲に買ったら、それだけで十分な出 費になるはず。
 今年、雑誌の呪縛から少し解き離れてみませんか? 1年経った頃、あなたの貯蓄が増えているかもしれません。