【主婦FPが語る】いまどきの生活のしくみ


● 個人の力が企業を変える!
◇ 9/05 ◇ 鹿野さち子(AFP)

先日冷蔵庫の冷えが悪くなり、某電気メーカーのお客様相談室にフリーダイ ヤルしました。

 「あのー。子供が冷凍室の温度調節ボタンを触ってしまってから、温度が下 がらないのですが・・・。」

 対応してくれるのはいつものように電気製品についてあまり詳しくない若い 女性社員だとばかり思っていたのですが、意外にも年輩の男性の声でした。

 「暑いですから、冷えるのに時間がかかるんですよ。もう少し、待って見て ください。」

 それでもなかなか温度表示が下がらないのでしばらくしてからもう一度電話 してみました。

 「あのー。何時間ぐらいしたら温度がマイナスになってきますか?」

 今度もまた別の年輩男性社員。もう夕方6時を回っていたにもかかわらず、 とても詳しく、消費者が安心するように的確な指示をしてくださいました。

 「4時間はかかるんですよ。お宅の製品は自動に霜取りをするものですから 一時的に霜がついて冷えが悪くなっても大丈夫ですよ。一気冷凍のボタンを押 して一晩待ってください。・・・・」

 おかげさまで翌朝には、マイナス20℃になり、アイスクリームもカチンカ チンに凍っていました。

 この会社の電気製品、うちで使っているモノだけでもなぜか故障が多く、そ のたびにメンテナンスの方を派遣していただいて、何千円(2000円から3000円 くらい)かの出張料をとられることが常でした。

 昨年、ある会社員がホームページ上でこの会社のずさんなクレーム処理の実 体を暴露し、会社側が最終的に謝罪するという事件がありました。

 私自身も以前、洗濯機修理を見積もってもらうときに「見積もり料がかかる ことをはじめに知らせてくれなかった」という経験があり、この会社について かなり不信に思っていました。

 そんな時、「HP事件」を新聞や週刊誌で見て、「ざまあ見ろ!ちょっとは 反省しなよ!」と思っていました。

 それから1年あまり。今回電話してみて、「会社が変わった」ことが電話対 応だけでもわかりました。

 おそらく今のように暑い時期にはエアコンの修理なんかで忙しいでしょう。 にもかかわらず電話を「たらい回し」にしたり、保留することなく、迅速に親身に なって解決策を考えてくださったのです。

 くだんの会社員のようにホームページなどで不特定の人々に訴えるのはすご い執念とエネルギーが必要です。しかし個人がその気になれば一大企業までも 変えてしまうという「インターネット時代の個人至上主義」を見たような気が しました。

従来は、たくさんの人に何かを知らせるには多額のお金がかかったので 「情報の送り手=企業、情報の受け手=個人」という固まった構図がありました。 そのため、情報を支配した企業が個人をコントロールすることができました。

しかしインターネットの登場後は、お金がなくてもたくさんの人に何かを知らせる ことができるようになり「情報の送り手=個人と企業、情報の受け手=個人と企 業」という構図に塗り替えられました。つまり個人と企業は対等の立場となり、個 人の力が企業を変えることも起こり得るようになったのです。

 インターネットは、ただ情報を得て買い物ができて・・・というメリットだ けでなく、「権力のぬるま湯につかっている者を変えてしまう可能性」をも秘 めています。日本を住みやすくするためには、そういった「IT社会の結集力」 に、個人がもっと注目しなくてはいけないと思います。

 小さな個人の訴えが、同じように感じていた人々の共感を得てどんどん膨ら んでいき、大きな力までも動かしてしまう。これが「IT経済のくらしに与える 最大の威力」なのかもしれません。

 でも、少し気になるのは、もしかしてあのお客様相談室にいる年輩の男性社 員達はリストラで相談室の椅子に座らざるを得なくなった方なのかな? という こと。

 もしそうだとしても、相談客からの電話を一度も取り次ぎ治すことなく 熟練社員の適切なアドバイスで消費者を安心させるシステムは、企業にとって 大いなるプラスです。あのおじさん達がリストラ組だったら(勝手な想像です が)伝えたいと思います。

 「お客様相談室は消費者の声を直接聞けるところです。消費者へのサポート 体制は企業にとってとても重要。どうか誇りを持って頑張って下さい!」