【主婦FPが語る】いまどきの生活のしくみ


● 人生の収支 ネット診断
◇ 8/29 ◇ 高原育代(AFP)

こんにちは、高原です。

27日付け朝日新聞の朝刊第2面に、このように題した記事が載っており、ふと目にとまりました。

その内容は、証券各社がホームページ上で、老後までの収支計算をしてくれる新サービスを導入、というものです。

現段階で、すでにサービスを始めているのは野村証券。
ということで、さっそくわが家について試してみることにしました。

その名も「ライフプランシミュレーション」。生年月日や職業、年収、退職金予想金額などに始まって、住宅についてや、子どもの教育費についてなどを入力すると、現在の年齢から80歳になるまで、その時々の収支を5歳刻みで、即座にシミュレーションしてくれる、というわけです。

さて、わが家の診断結果は…。
1回目、今の現状をおおまかに入力したら、ナント80歳時点で、1億4千万円もの大赤字という結果。どう思われます?

こういったシミュレーション、雑誌なんかに載っている場合もありますが、インターネット上でやるシミュレーションは、数字をポンポンと入力し、「enter」キーを押して待つ、あの間がなんとなくワクワク、って感じで結構ハマッたりします。

ですが、その出てきた数字をどうとらえたらいいんでしょう。

私自身は、「ポンポンって入力した数字に対して、ポンッって出てきた結果なので、あっそぅ、ととらえる」、こんな感じでしょうか。

この「80歳時点で、1億4千万円の大赤字」っていうのは、考えようによっては、大騒ぎして落ち込まなくてはいけません。でも実は、一つ前に戻って入力する数字を変えることで、結果は簡単に変えられるのが、シミュレーション。だから私は「アハハ、ちょっと入力した数字は欲張りすぎちゃったナ」と受け止めました。

1回目に私が、気楽に入力した数字というのは、はっきり言って理想というか希望です。現時点で、わが家の場合は、家をいついくらで買うかも、8歳と3歳の子どもたちの大学までの進路も決まってはいません。
「家? まあ、5年後に5000万円の家が持てるなら、いいナぁ」「子どもの教育? 中高は私立に進んで、大学は国立の文系に自宅通学ってしとくかな」とまあ、こんな感じで入力したわけです。

でも、その結果として、いきなり1億あまりの大赤字が、目の前に飛び込んできたら、誰だってビックリするでしょう。

同じようなシミュレーションがよく使われるのが、生命保険会社の「必要保障額」の計算。

この場合も、上と同じように、生活に関わる数字を入力して、「もし、今ご主人が亡くなった場合、あなたのお宅で必要になる金額はこれこれです」といって、1億を超える数字が提示されたことはないでしょうか。

シミュレーションを体験することで、普段の生活を見直したり、長期展望の一つの判断材料にすることはとても有意義だと思います。

ただし、結果として出てきた数字に、そんなにビビッてしまってはいけないと思うのです。
特に、そのシミュレーションを提供しているのが、一企業である場合には。

上で例に挙げたシミュレーションの場合も、野村証券という一企業のサービスです。当然、企業としての思惑があることも、頭の隅っこに置いた上でそのサービスを利用するべきだと思います。

もともとの新聞記事に戻りましょう。「証券各社が同様のサービスを始める」としています。

これは、「確定拠出( かくていきょしゅつ )型年金」という、新しい年金制度が近い将来始まるにあたって、今後は、年金運用の手段も個人に任される部分が出てきます。そこで、証券各社が、個人のお客さんに自社の商品を選んでもらおうと競争を始めようとしているわけです。

シミュレーション自体はとてもよくできていると思うので、希望通りの数字を入れてみたり、夢をあきらめて節約する場合の数字を入れてみたりして、体験してみる価値はあると思います。
今後、各社のサービスが出そろって、比較できるようになるともっとおもしろそうです。

「人生の収支をネットで診断」と新聞記事には題されていましたが、どんなときに、いくらのお金が必要か、これを決めるのは、どこの証券会社でも、どこの生命保険会社でもありません。
それは、あなたやあなたの家族ではないでしょうか。