【主婦FPが語る】いまどきの生活のしくみ


● ビールにするか、発泡酒にするか。それが問題だ!
◇ 7/18 ◇ 鹿野さち子(AFP)

 ここ何年か、日本の夏は「やってられない」くらいに暑い。

 こんな時は、お風呂上がりや夕食の際に缶ビールを「プシュ」とやると一日の 疲れもぶっ飛んでしまうものです。

 しかしここで、家計を任されている主婦は「普段飲むのをビールにするか発泡 酒にするか」という問題に直面してしまうわけです。

 スーパードライやラガーなどの“缶ビール”が350ml缶218円。それに比べて、 淡麗やマグナムドライ、ブロイなら145円と73円もの差があります。

 1本あたりがこの差ですから毎日平均1本飲む家庭ならビールを発泡酒に変える だけで月当たり2190円もの節約が出来るのです。「パパの給料も上がらないし ちょっと考えなくては・・・」となってきています。

 この差額は一体どこから来るのでしょうか? なんか酒税が関係しているのは 聞いたことがあるのですけど・・・。

 そもそも、ビールなどのお酒に税金がかかるのは大蔵省は「特殊な嗜好(しこ う)品であるため」と説明します。どうしても体に不可欠なものではなく、税金 を負担したくなければ、水を飲んでおけば? ということでしょうか。

 酒税というのは消費税と同じ間接税。モノやサービスを消費した時に値段の中 に含まれ、国に支払われます。やはり消費税と同じようにいったん販売店が税金 分を消費者から預かり、まとめて国に支払ってくれています。

 発泡酒が発売され始めた頃別名「節税ビール」という呼ばれ方をしていたこと を覚えていらっしゃるかと思います。その名の通り発泡酒は価格に含まれる酒税 が少なくて済むように作られています。

 ビールは、麦芽、ホップ、水で作られていますが、酒税の比率は主原料の麦芽 の使用比率によって決められているそうです。基本的に原材料中の麦芽比率が3 分の2(66.75%)以上のものがビールそれ以下を発泡酒と区別します。

 ビールは希望小売価格218円のうち77円70銭(35・64%)が酒税です。ところ が現在各社から発売されている発泡酒の希望小売価格は145円。そのうち酒税は 36円75銭(25・34%)で税額はビールの半分以下。

 税金の差は40円95銭ですが、小売価格の差はそれを上回る73円に及んでいるの です。

これは単に発泡酒が“節税用”のビールではなく、73円−40円95銭=32.05円 分の“企業努力のたまもの”ビールであることを示します。具体的にはこくを出 す麦芽が少ない分、その他の副原料(米、とうもろこし、こうりゃん、ばれい しょ、でんぷん、糖類、カラメルなど)をあらかじめ糖にして分解するなどして 甘みを出したり、流通や販売に至るコストを削減したりしているのだそうです。

 今年になって、あの「イチサンパー!」というキョーレツなCMを引っさげ て、138円の発泡酒が発売されました。こうなったら値下げ合戦みたいです。長 引く不況の中、やはり値段で選んでしまうという消費者の声を反映してのことで しょうか?

 でもビールって一体何のために飲むのでしょう?

 たばこのような単なる嗜好品ではなく(愛煙家には失礼ですが)、生活の場面 場面をその泡のごとくスパークリングさせる役割があると思います。料理を引き 立てたり、イベントの後でご苦労さんとねぎらったり。いい汗をかいた後に喉を 潤したり・・・。

 ビール、発泡酒の枠にとらわれず、その生活のシーンにあった味やイメージの ものを選んで気持ちよく飲むことが、少なくとも36円75銭〜77円70銭の税金とい う余分なコストを含んだ商品を最大限効果的に利用する方法ではないでしょう か?

 メーカー側からの提案としては「汗をかいた後は発泡酒、料理を味わうときは ビール」というような飲みわけをするのがおすすめだそうです。

 最近は発泡酒の節約イメージもすっかり払拭されましたので、すっきり味が好 きな人にとっては省コストで企業努力のたまものを享受できるようになったと考 えられます。

 私も近ごろ、“椎名桔平の作った冷製パスタを食べたいなぁ”と思いながら時 には発泡酒派になったりもします。味としてはやはりビールが好きなんですけ ど・・・。

 いまどきの個人主義経済の中では、こうして飲み物ひとつ取っても「いかに自 分に合ったモノやサービスを手元の情報から分析し、選択できるか?」が快適生 活を送るカギとなってくることがわかります。

 ちょっとした「選択基準=こだわり」を持って楽しく快適に生きていきたいも のです。