【主婦FPの視点】経済ニュースなんてコワくない!


◆新幹線は幸せも時速250Kmで運ぶか?
○ 12/22 ○ 栄田育子(CFP)

 国は今、来年度(2001年4月〜2002年3月)の予算を立てるのに必死です。 私たちが一生懸命払っている税金の使い道を考えているわけです。
 7500億以上の予算がついたIT関連の陰に隠れてあまり目立ちませんが、 来年度予算の原案では750億円もの予算がつき、実に今年度に比べて100% 以上の伸びを見せている事業があります。 整備新幹線です。

 整備新幹線とは、現在新幹線が開通していない地域、あるいは未着工の区間 に新幹線を走らせる計画のことです。今回新規に工事に着手することになった のは北陸新幹線と九州新幹線のあわせて3区間。それぞれの地元にとっては経済 効果が期待できるうれしいニュースでしょう。

 実際新幹線は便利な乗り物だと思います。
 スピードは速いし、事故も比較的少なく(山陽新幹線のトンネル事故もさす がに最近あまり聞かなくなりました)、時間もかなり正確です。

 東京−新大阪間の新幹線の売上は、JR東海の売上の8割を占めると言う話を 聞いたことがあるのですが、今や新幹線は利用する側にとって便利な乗り物で あるだけでなく、日本経済への影響力を持った交通手段になりました。朝7時 ぐらいから8時ぐらいの東京駅の新幹線ホームは、サラリーマンだらけで首都圏 のラッシュ並みの混雑です。大阪方面への出張が多い証拠です。

 こんな便利な新幹線ですから、どの地方も線路が自分の地方に伸びてきて欲 しいと思うわけです。新幹線のレールが伸びれば、観光客も増えると予想でき るし、企業誘致にも有利です。つまり、景気が良くなると予想できます。さら に、レールを伸ばすための工事に求人が発生しますから、深刻な失業問題の一 時的な解決策にもなります。なんだかいいことばかりのように思えますね。

 新幹線のような事業は社会資本に対する投資です。
 つまり、国民がより快適に過ごせるようなお金の使い方だとみなされるため、 一般的には無駄だとはみなされません。

 同じような事業に、空港や高速道路を作る というようなものがあります。確かに空港も高速道路も生活を便利にするため の施設ですね。でも、生活を便利にするためのこれらの施設が、最近お荷物に なっているケースがどうも多いようなのです。

 こんな話を最近良く聞きませんか?
 地方空港は1日1便ぐらいしかフライトがなく、ほとんど人影もなくて維持費 ばかりに税金が費やされる。あるいは、1日数万台が利用する予定で作った高速 道路にほとんど車が走っていない。

 各都道府県は、空港、新幹線、高速道路を作るために必死だと言われます。 これらの手段がすべて整っていなければ、政治や経済が思い通りに行かない という思いこみがあるらしいのです。しかしながら、仮に全部作って、見た目 は生活が便利になったように見えても、実際利用する人が少ないのなら、本来 の目的を果たしているとは言えないのではないでしょうか。

 もう一つ、これらの便利な手段が一つ増えると既存のサービスが廃止される ケースが多いようです。今月、日本一便利な都市東京で全線開通した大江戸線 は大半に歓迎されているようですが、一方でバスの路線が廃止になった区間が いくつかあったようで、不便をもたらしていることもあります。

 整備新幹線で廃止になった鉄道路線もいくつかありますね。 地方のローカル線は列車の本数が少なくても、大事な地元の人の足である ことが多いのです。一部の便利さを優先した結果、不便さを安易に招いては いないでしょうか?

 というわけで、今回整備新幹線の新規着工が3年ぶりに行われると聞いて、 私は正直言っていくつか疑問を持ちました。

・費用対効果をきちんと把握してからレールを伸ばすことを決めたのか?
・税金を払っている国民に対してどれだけのメリットを提供し、どれだけデメ リットを少なくするかまで考えているのか?

 次に新幹線に乗るとき、スピードにワクワクするだけではなく、ちょっと こんなことを考えて乗ってみませんか?  新幹線に対する認識が少し違ったものになるかもしれません。