【主婦FPの視点】経済ニュースなんてコワくない!


◆いまさらGDP されどGDP
○ 12/08 ○ 鹿野さち子(AFP)

 今週の前半、今年7月から9月までの国内総生産(GDP速報)が発表さ れました。

 GDPとは国の景気の動きを表す最もポピュラーな数字。GDPの伸び率 (経済成長率)が上昇すると株も上がるし、悪くなると政府は景気対策だの、株価対 策だの余計な心配をしなくてはいけなくなります。

 簡単に言うとGDPとは決まった期間内に日本の国の中で生産されたモノやサービ スの全部の売上高から、生産の途中で消費される原材料や燃料など(中間消 費財)を差し引いたものです。

 例えば「お店でパンを買う」という場合、買ったパンの値段から、原料の 小麦粉やバターの値段を引いて計算されます。

 パン屋さんが「原料の小麦粉やバターを買った」時点でその費用がすでにGDPとし てカウントされていますので、それらが二重に計算されるのを防ぐため、最終消費 財の価格(この場合、お店で売っているパン)から、原材料費(小麦粉やバター)を引 いておくわけです。

 反対に「家でパンを焼くので小麦粉をスーパーで買った」場合、その小麦 粉の値段全額がGDPとしてカウントされることになります。

 つまりGDPというのは経済活動の中で生み出された「付加価値」の合計 と言うことになります。

 今回のGDPは新しい基準に変更されたそうです。新聞をよーく読んでみ るとなんだか今までとは違って企業などがコンピューターのソフトウエア投 資に支払ったお金がカウントされるようになったとのこと。ソフトウエアは今までは中 間消費(小麦粉やバター)とされカウントされなかったそうです。

 『ひぇー。じゃあソフトウエア専門にやっていた会社はGDPに直接、貢献していな かったんだ』と驚いてしまいました。

 そしてさらにびっくりしたのは『今回の変更は22年ぶり』ということ。 ドッグイヤーと言われる時代の22年ですから人間に直すと150年くら い。つまり江戸時代末期のやり方を今まで引きずっていたというところでしょうか。

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 ところで最近私の周りではいろいろな趣味を持つ人が集まり、それぞれ得 意分野を生かしてお互いに楽しんでいます。

 お総菜を作るのがうまいMサンは「たくさん作ったよ」と夕刻におすそ分 けをしてくれます。パン作りのうまいBサンは「今から焼くから30分後に 集合!」と言って焼きたてをふるまってくれます。

 トールペイントの上手なYサンは殺風景な我が家に見事に花を描いたトレ イを「うちには飾りきれないから・・・」と置いていってくれました。

 そして芸無しの私も「かのっちパソコン教えてよ」と言われています。 (注・私は“かのっち”とよばれている。)

 Mサンのお総菜も、Bサンのパンも、Yサンの絵も、どれもすばらしい付 加価値の付いたものです。(かのっちのパソコン教室はたぶんヒサンでしょ うが・・・)

 しかもそれぞれ、自分の趣味という欲望も満たしながら、他人の幸福ため に一役を担っている、すばらしい生産活動なんです。それなのに3人の作り 出した付加価値は全くGDPにカウントされません。

 GDPの伸びがどうであろうと、こんな風にして生活を楽しめる人達が 近年増えていることは事実なのです。戦後の生きていくのがやっとの時代に は決してみられなかったことでしょう。これを経済の成長と言わず して何というのでしょうか?

 政府や経済学者や投資家のみなさん! GDPの伸びのコンマナンパーセント にやたらと神経質になっていませんか? このように「数字に表れない経済成長」も世 の中にはいっぱいあるんですよ!

 それでもやはり長年蓄積したデータの重みもあなどれません。GDPは今後もさら に、日々多様化する国民の価値観に合わせ、時代に即した基準へと進化していくことが 必要なのではないかと思われます。