【主婦FPの視点】経済ニュースなんてコワくない!


◆シーガイア破綻は800年前に予言されていた?
○ 3/02 ○ 栄田育子(CFP)

 「ゆく河の流れは絶えずして、しかも、もとの水にあらず。淀みに浮ぶう たかたは、かつ消えかつ結びて久しくとどまりたるためしなし」

 高校時代古典が大嫌い(ちなみにあたしは文系でした)だった私でも、 このフレーズはなぜかよく覚えています。題名を思い出せなかったので、 インターネットで調べました。約800年前に鴨長明が書いた方丈記です。

 「流れゆく川の流れは絶えないものではあるけれど、その流れをなして いる水は刻々に移っていて、もとの水ではないものだ。流れが停滞してい るところの水面に浮かぶあわは、一方においては消えるかと思うと、一方 においては浮かんでそのままの姿で長くとどまっているという例はないも のだ。」という意味だそうです。

 久々にこのフレーズを思い出したのは、これが先日破綻したシーガイア に余りにもぴったりと当てはまると思ったからです。

 シーガイアは、今から10数年前制定された「リゾート法」指定第一号と して計画され、94年に全面開業した施設です。リゾート法が制定されたと きの日本は、おなじみのバブル期でした。シーガイアは本当に「泡の産物」 だったのですね。

 屋根が開いて、波も出る大きなプール。とっても高さがあるホテル。大 きな国際会議場。施設はどれも立派だけど、ほんとの中身は借金だらけ。 外形も内部も美しい姿をとどめておくのは、泡と同様むずかしかったから、 破綻してしまったのでしょう。

 ここ数年、シーガイアと同様リゾート関連施設がどんどん破綻していま す。似たようなたぐいに、一時期はやったテーマパークがありますが、元 気なのは東京ディズニーランドだけで、あとは景気のいい話を聞きません。 栄田が個人的に好きなハウステンボスも去年債権放棄を申請しましたっけ。

 リゾートという言葉は、人をなんとなくリッチな気持ちにさせてくれる し、実際そうあるべきだと思うのですが、せっかちで飽きっぽい日本人は 同じ場所でじっくりくつろぐと言うことがどうも出来ないようです。旅行 は短期間でいろんなところをみて回れるという方がお得に感じてしまう日 本人に、リゾートと言う言葉はなじまないのかもしれません。「シーガイ ア4日間」よりも「南九州各地周遊4日間」のほうがなんだかお得に聞こえ る私も例外ではないでしょう。

 そもそもこんな日本人に目を向けずに、日本中のあちこちにリゾート関 連施設が出来てしまったのは、リゾート法の後押しで公的資金、つまり税 金を調達出来たからです。その税金を使って、施設を作る計画を立てれば、 建設の為に必要な雇用も確保できるし、必要なお金のメドもある程度は立 つ。そして完成後は観光客を呼ぶことが出来る、といいことばかりに思え たのでしょう。

 ふたを開けると、若い人は海外にリゾートを求め、年配の人は温泉にリ ゾートを求めました。シーガイアが計画された時にはもう川は流れ始めて いて、出来あがったときにはすでに「久しくとどまりたる」ものではなく なっていたのです。読みが甘かったといえばそれまでかもしれませんが、 そもそも、どんなハコものも完成後の事を考えずに作っているような気が してなりません。

 税金を呼ぶための、甘い観測。 これがもとで出来あがったハコものが、リゾート施設に限らず日本中に はゴロゴロしています。でも、鴨長明が言うようにどんなものも「久しく とどまる」ものでは無いことを、少し日本の役人に勉強して欲しいなぁと 思います。

 鴨長明は800年も前に無常観をつづりながら、シーガイアの破綻を予測 していたのでしょうか。ま、そんなことは無いでしょうけど、先人の教え は、今読んでもそれなりに意味があることなのだと栄田自身もずいぶん勉 強になりました。高校時代に、何で古典を勉強しなくちゃいけないんだろ うと思っていましたが、今になってその意味を少し理解できた気がしてい ます。