【主婦FPの視点】経済ニュースなんてコワくない!


◆いまどきの雇用と「グラホ」の真実
○ 1/12 ○ 鹿野さち子(AFP)

 先週の新聞によると「雇用のミスマッチ」が拡大しているそうです。

 全国の職安によると、「求人充足率」(新規の求人に対して、めでたく就業した割 合)は、昨年11月で前年の同じ月比に比べて5.1ポイント低下し、24.9%になったとい うことです。

 つまり一つの企業が4人の人員を募集しても何らかの原因で1人しか採用できないと いう計算になります。

 低下の原因にはいろんな事情があると思いますが大きく分けて二つ考えられるそうで す。一つはIT分野を中心に求人企業が増えているにかかわらずシステムエンジニア (SE)などのスキルのある人が不足していて、企業側の欲しい人材が確保できないと言 うこと。

 そしてもう一つは、小売などのサービス業で、激しい価格競争のために賃金や労働条 件が厳しくなり、求職者達の希望条件と合わないことです。

 フリーターの増加も深刻な社会問題。希望の会社に就職できないから、とりあえず チャンスが来るまでアルバイトでもして親の扶養家族で居ようとする若者も多いようで す。

 こんな昨今ですが、時給1050円のサービス業なのに、容姿端麗、英語堪能のお嬢 さん達がぜひその職に就きたいと派遣会社に登録して出番を待っているというアルバイ トがあると言うことを知りました。

 わたしの友人、K子が半年前に採用になった“グランドホステス”(略して“グラ ホ”)、つまり空港で搭乗券の発券や案内をするあのお姉さん達です。田中康夫でなく ても男性ならみんな「い〜よなぁ」と見とれてしまうスッチーと同じ格好をしてサッ ソーとしている人たちです。

 先日そのK子に会ったのですが、どうも彼女の様子がヘン。なんかとっても疲れてい るようです。「忙しいの?」と聞くと「ちょっと聞いてぇ」から始まり、立ちっぱなし で休憩もないこと、薄給の上に交通費は出ないこと、制服は貸してくれるがクリーニン グやアイロンは自分ですること、靴は自前、年末年始も関係なし・・・など、この時代 に野麦峠の女工のごとく働かされているという話をえんえんしてくれました。(派遣先 によって時給などの条件は違うそうです。)

 見かねたわたしは言いました。「そんな仕事やめちゃえ! 前にやっていた英会話教 師の方がよほど時給良かったじゃん?」 しかし彼女は言いました。「いいえ。この仕 事に就けるまで順番待ったし・・・この制服着ているだけで空港内ですごい優越感だ し・・・忙しくって痩せたし・・・芸能人の搭乗記録見られるし・・・」 

「・・・あっそう・・・好きにしたら・・・?」

 この業界にとっては他のサービス業のような「雇用のミスマッチ」は無関係。いくら 仕事がきつくてもスチュワーデス、グランドホステスともに希望者はぞくぞくというこ とです。これらの職種自体が「空を旅する人のナビゲーター」といういかにも夢のある 仕事だからです。小さい頃からのアコガレだった人も多いようです。「その制服を着て いるだけで玉の輿に乗れる!」ような気分になるのでしょう。

 でもよく考えてみるとこの航空会社の件も「一つの採用枠に大勢が押しかける」→ 「雇用側は以前のように社員として採用は出来ないから低賃金で働いてもらえる派遣で 採用」→「希望者が多く、いつでも次の人が採用出来るので仕事がきつくても時給が上 がらない」という典型的な労働問題の悪循環に陥っている例だとも言えます。

 彼女たちだって本当は正社員としての安定した待遇を望んでいるはずなんです。 彼女たちの夢と、妥協を許さないプライドが航空会社に利用されてしまっているんで す。

 職業を選り好みする最近の若者の傾向は、「夢を追求する。」「自分に妥協しない」 点では応援すべきことです。しかしその人たちが普通に会社に就職したらもっと払って いるはずだった所得税分、社会保険料分などが、現在とこれからの国民への負担となる ことは避けられません。

 「終身雇用システムが崩れて来たんだから“プータロー”や“フリーター”が増えて もしかたがない」と言えばそれまでですが、雇用する側とされる側、もう少しお互いに 歩み寄ることが必要なのではないかと思います。企業側は給料ばかりでなくもっとその 職業自体の魅力をアピールする方向へ、そして雇用される側はもっと広く柔軟な視野を 持って職業選びをする事が大切なのではないでしょうか?

 今後ますます技術者が不足しそうな業界では、例えば「松嶋菜々子主演、システムエ ンジニア物語」なんていうドラマを作っちゃえば人材確保も楽に・・・なんてならない かなぁ・・・。




 


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