【主婦FPの視点】経済ニュースなんてコワくない!


◆美味しい「中期国債ファンド」ついに打ち止め
○ 10/06 ○ 西島直子(AFP)

 はじめまして。西島直子と申します。
今回から金曜日のコラムの執筆陣に加わることになりました。 難しいことを分かりやすくお届けしていきたいと思っています。 リラックスしてお付き合いくださいね。

 さて、だいぶ涼しくなり過ごしやすくなった9月末の頃、 『中期国債ファンド償還』のニュースが飛び込んできました。 新聞の1面広告に掲載されたので、目についた方もいらっしゃるかと思います。

 そうです、野村證券の中期国債ファンドが来年の9月21日をもって終了となり、 投資したお金が収益分を合わせて戻ってくることになったのです。

 中期国債ファンドは、雑誌などのボーナス特集でもよく取り上げられ、 超低金利のご時世で、安全だけどスズメの涙ほどしか増えない銀行や郵便局の預金 に不満を抱えている人たちに人気のある金融商品です。

 人気のひみつは、リスクが比較的小さいのに、利率は高いところで1.4%とかなり 良いこと。また、買ってから30日経過すれば解約するときに手数料がかからない メリットがあること。

 とはいえ、少額のお金を集めて専門家が運用してくれる、投資信託の一種。 元本が保証されているわけではありません。

 しかし、中期利付国債や公社債(国や企業などの借金で、期限が来たら利子をつけて 返してくれることを約束したもの)に絞って投資していて、よほどのことがない限り その約束は破られないことから、かなり安全な商品となっているだけなのです。

 このように安全指向の人向きで美味しい「中期国債ファンド」はなぜ、償還される ことになったのでしょうか?

 中期国債ファンドの利率は、実際には「予想分配方式」を取っています。 銀行などの預金利率と違って、預ける時に決まっているものではないのですね。 「これぐらい収益を分配できます」とあらかじめ宣言しておき、本来的には運用成績 によって分配されることになります。

 そしてその運用成績は、普通の投資信託の場合投資した資産の評価は日々変化するのに 対して、中期国債ファンドの投資資産は購入したときの価格で評価できるように なっています。

 この評価の違いも利用して、予想以上に運用で利益が出た場合、つまり儲かった場合は、 儲かった分を貯めておきます。逆に予想以上に運用結果が悪かった場合、つまり損 をした場合は、それまでに儲かった分を持ち出すことが出来るので、あらかじめ提示 した予想分配率を維持することが出来るのです。 このしくみが元本割れを防いでいたと言えますね。

 お寿司屋さんを想像してみてください。 ちょっと高級なお寿司屋さんは、にぎりの値段がネタの時価で決まってきます。 これは、需要と供給のバランスから、市場の適正価格を取り入れているといえます。 ふつうの投資信託はこれにあたるわけです。

 回転寿司は、いつも値段は一定なので、仕入れの値段が安いときには儲けが多く、 逆の場合は損をするということになります。 その辺りのバランスを考えて、逆に値段を決めたり、他のネタの儲けと調整したりする ことから、中期国債ファンドと似ているといえますね。

 ところが、この中期国債ファンドの資産の評価方法が来年4月から変更になり、 運用がクリアに日々評価されることになりました。

 つまり、今までのように儲かったときに儲かった分を貯めておくことができなくなる ので、逆に損したときに損を埋めるためのお金がなくなり、投資家に対してある一定 の儲けを出してあげることが難しくなるのです。

 過去に元本割れしたことがなかった安全性、それから、預金に比べての 高利率という大きなメリットがなくなるわけですから、投資する側としてもあまり魅力 を感じなくなりますね。

 販売・運用側からみても、元本割れの可能性もあり、安全性をうたうことへのリスクも かなり大きくなるので、償還に踏み切ったともいえるでしょう。

 この動きは各社へも広がる可能性がありますが、仮にそのまま販売を続ける場合でも 利率は低くなることが予想され、今ほどの旨味がなくなることは確かです。

 最近の中期国債ファンドの高利率は、この変更に対応するためで、予想以上の運用成績 を出したときに蓄えておいた儲けを少しずつはき出しているからではないかと言われて います。

 郵便貯金の大量満期の話題のときもそうでしたが、人気の中期国債ファンドの償還後の 受け皿商品になりうるものが各社競う中で出てくることが楽しみでもあります。

 ただし、注意しなくてはいけないことがひとつあります。 中期国債ファンドをきっかけとして流れてきた資金は、証券会社などにとっては、 未来の収益の源。なぜなら、他の金融商品を買ってくれる可能性があるから。

 償還されたときの対応次第で、証券会社などの評価が分かれるところですが、 その前提として、投資する側は勧められるままに買うのではなく自分でちゃんと考える ことが重要であることは忘れないでほしいです。