【主婦FPの視点】経済ニュースなんてコワくない!


◆よいデフレ わるいデフレ
○ 9/15 ○ 鹿野さち子(AFP)

 「88円ショップが出現」というニュースを見ました。映像で見る限り売っている ものは100円ショップと何ら変わりありません。平たく言えば従来の「100円ショッ プ」が全店1.2割引きセールをしているようなものです。

 毎日家計をやりくりしている主婦にとってこのようにモノの値段が下がることは 「超ラッキーって感じ」です。おそらく88円ショップで売っているものはほとんど 人件費の安いアジア諸国で作られたモノでしょう。これは製造や流通のコストを削 減してライバル店よりも1円でも安く販売しようという企業努力の現れです。

 こんな世の中、新聞紙上で発表される経済統計にも「物価の下落」を表す数字が 出続けています。8月25日発表になった「8月の東京都区部の消費者物価指数」※ は、物価変動の大きい生鮮食品を除いた総合指数で100.7%となり前年同月に比べ て0.8%下落しました。前年水準を下回るのは11か月連続だそうです。

 最近、私も生活のいろいろな面でモノの値段が安くなってきたことを感じます。


 【例1】
 電話料金や携帯の使用料が以前より安くなった。

 → 通信事業への規制が緩和されてからNTTグループとKDDIグループ、その他新規新規参入組で熾烈な争いをしているからでしょう。

 【例2】
 アウトレットモールに行くと、デパートではめったに値下げしないブランド品が値下げで買えます。

 → 従来と違った店舗の形態でお客を呼び込み、仕入れを工夫しコストを削減したため。「アウトレット」自体が「B級ながらもブランド集団」という「ブランド」を確立したとも言えるんじゃないでしょうか。

 【例3】
 最近、スーパーの「アイスクリーム半額」の日に「ただしハーゲンダッツはのぞく」と書いていない!!

 → 販売元が値段を下げないように小売店を「指導」してきたのが97年に勧告を受け、その後安売りを見かけるようになりました。


 これらのように規制の緩和や制度の変更、競争の激化などの「はっきりした理 由」があって値段が下がるのは「よいデフレ」というんだそうです。

 「資本主義経済」はいかに効率的にモノを作って多量に販売するか? を競争す る社会ですので健全な自由競争が行われていれば企業は少しでもいいモノを安く提 供できるように努力します。そういう意味で日本が、より健全な資本主義になりつ つあるともとれます。

 「よいデフレ」の経済下では「購入できるモノの範囲が広がる」わけですか ら我々の生活は豊かになり、企業にも活気が出てきます。

 これとは違い、「買う人の購買意欲が振るわなくて、何となくモノが売れ残って 業者の在庫が増えモノの値段が全体的にずるずる安くなっていく」。このように 「需要と供給のギャップ」がモノの値段を下げるのは「わるいデフレ」と言いま す。

 「わるいデフレ」になると企業の収益が上がらずに、労働者の給料は減り、 失業が増え、余計にモノが売れなくなり、さらにモノの値段が下がり、さらに企業 の収益が悪化する・・・という「デフレがデフレを呼ぶ状態(デフレスパイラル)」 になりかねません。

 今の日本の物価下落が「よいデフレ」か「わるいデフレ」かどっちだろう? というのは日銀、政府のえらい人の間でも意見が違うと言うことです。

 日銀は「よい」、経済企画庁は「わるい」といっているようですがそれは「自分 たちの政策」の根拠をこじつけるためのパフォーマンスが多少なりとも入っている と言われています。

 確かに夏物のおシャレ着が70%OFFになって売れ残っているところなどを見ると 「モノを買う」という行動自体に無条件に“ときめいた時代”は終わったような気 がします。となると近年の物価下落が全く「よいデフレ」と言い切るには少しば かり早計かもしれません。

 しかし、買うこと自体への魅力はなくなってきたものの、インターネットの普及 によって、モノを選ぶときの基準になるいろいろな情報はずいぶんと身近になり、 購入の方法も多様化しました。

 また思ったとおりのモノが売っていない場合は企業側に欲しい品を提案すること も容易になり消費者主体でのモノ作りも次第に受け入れられはじめました。

 今後は、ブランドやCMイメージに惑わされずに情報を活用して、低コストで「自 分の一番欲しいモノを見つけだす」ということに“ときめく時代”になっていくの でしょう。

 それが「21世紀型よいデフレ」へのワンステップなのかもしれません。

☆☆★今週のキーワード☆☆★

 消費者物価指数※

 消費者が実際にお店で購入するときの価格を調べたものを「小売物価統計」といいます。その小売物価に、「家計調査」で調べた各商品やサービスの支出比率をウエイトとしてを乗じて計算されます。

 物価全体を表す「消費者物価総合指数」の他、食料品、住居、光熱、家電、通信などに分類されています。5年ごとに更新される基準年(現在は平成7年度)を100として何パーセントになるかで表されます。

 小売物価統計、家計調査、消費者物価指数、いずれも総務庁が毎月発表しています。
 総務庁:http://www.stat.go.jp/