【主婦FPの視点】経済ニュースなんてコワくない!


◆「消費税」はダレのもの!?
○ 9/08 ○ 高原育代(AFP)

こんにちは、高原です。
栄田さんが、「これは何?シリーズ」ということで、私の方は「身のまわりの税金シリーズ」第2弾と題してまいりましょう。

さて、みなさんに最も身近な税金といえば、何が思い当たりますか。
老若男女問わず、とにかく買い物をすれば払わなければならない税金、そう、「消費税」を挙げる方は多いでしょう。

来年の税制改正に向けて、この「消費税」にあらたな制度が導入されるかも…という記事を日経新聞で見かけました。

7/21付、この金曜コラムで、「政府税制改正 中期答申」と、ナニやら難しげなものを取りあげました。その中で、消費税の税率引き上げの問題が、今後課題に入ってくるかもしれないと書かれていたことをお伝えしました。

今回のあらたな制度も、それに関係がありそうです。

国や自治体の財政難が続いているため、税金を徴収する側はその収入源を増やす方法を考えようとしています。手っ取り早いのはやはり増税というわけでしょう。

でも、1989年に導入された消費税には、その当時から、いくつかの不公平さが指摘されてきました。

そのうちの一つが「益税問題」。
本来なら、私たちが支払った消費税は、商店等を通して税務署にキチンと届けられているはずですよね。
私たちは、そう信じて、商品代金と合わせて消費税を本当は「払って」いるのではなく、「預けて」いるわけです。

ところが、その私たちが預けている消費税の一部が、商店等のフトコロにとどまって、税金として納められていないとしたら…。つまり、“税金”がある業者の“利益”になってしまうという由々しき状態、これを「益税(えきぜい)問題」といいます。

こんなこと、当然も当然、税金を納める側の私たちは許してはならないことですよね。

なぜ、こんなことが起こってくるのでしょうか。

実は、仕入れに関する消費税のしくみに穴があるからなのです。
売上高によって、課税が義務づけられている業者と、課税を免除される免税業者があることが大きな要因です。

例えば、A商店が、商品を仕入れする場合を考えてみましょう。

A商店が仕入れたい原価100円の商品を、B卸店とC卸店が扱っていて、それを200円で私たち消費者に販売するとします。
この2つの卸店は、売上高にもかなり差があり、規模の小さいC卸店は免税業者となっています。

A商店が、課税業者であるB卸店から仕入れた場合は、「100円プラス消費税5円」を支払います。免税業者であるC卸店から仕入れた場合は「100円」を支払います。ところが、「105円」で仕入れようが、「100円」で仕入れようが、その商品を私たち消費者には、「200円プラス消費税10円」で売ることができます。

私たちは、A商店が「消費税10円」が税務署に届くと信じて代金と一緒に支払っているのですが、A商店が税務署に示す帳簿や請求書には、今の制度ではナント、仕入れ段階で消費税を支払ったかどうかを明確にする必要がないというのです。

ですから、A商店が実際はC卸店で100円で仕入れていても、「96円で仕入れて、4円の消費税を支払った」と申告すれば、仕入れで支払った消費税は差し引いてよいことになっているので、その4円分はそのままA商店の手元に残ってしまい、私たちが託した消費税の一部は、A商店の利益になってしまうというのです。


(注)この例では角度をつけて書いてありますが、A商店の全売上の消費税分が丸ごと利益になる訳ではありませんので誤解のないようにご注意ください。免税業者であっても、様々な仕入れの際には消費税を支払っているケースが多いですので。


さすがにこれはヒドイということで、( というか、今までもこの問題は指摘されつづけてきたのですが ) やっと今回通産省が、来年度の税制改正に「インボイス」方式を導入しようではないかと、要望を出しました。

この「インボイス」というのは、ひとことで言うと「伝票」のことです。
つまり、仕入れなどにかかった消費税の金額を明確にして証拠を残すための伝票です。すでにイギリスやフランスなどでは、日本の消費税に相当する税に対してこれを導入しているそうです。

でも、どの段階でいくらの消費税がかかったかを明らかにする、なんて素人の私が考えたってごく当たり前のことだと思うのですが。

一応、消費税導入時の1989年や、税率引き上げの1997年にも、この「インボイス導入論」が出たようですが、結局は「事業者の事務負担増加」を理由に見送られた、とのこと。

たしかに業者にとっては、今までより大変なことになるのかもしれませんが、それでもそんな理由で、みんなが預けている消費税を、不当に自分の利益にしてしまうことが可能な現在の制度を放置していることは、とんでもないことです。
業者側の理屈を通して、消費者の負担を増やすのは本末転倒。

消費税がダレのものなのかを明確にする制度をちゃんと整備してもらわなくては、安心してお買い物もできません。これでは、消費も順調に伸びていきませんよね。