◆借金は、借りる前に悩みましょう |
○ 8/11 ○ 高原育代(AFP) |
鹿野さん、栄田さんと、「債権問題」が続き、債権だの債務だのの話がでてきましたが、もう一回おつきあいください。ただし、今回はもっと身近な個人の債務、つまりは「借金」の話です。 先月末に、個人が自己破産しないで生活を立て直すことを可能にするための「個人債務者の民事再生手続きに関する要綱案」というのが決定されました。 多額の借金を抱えてどうにもならなくなってしまった場合、どんな方法を思いつきますか。 おそらく「自己破産」ということばが、思い浮かんでくるのではないでしょうか。 それだけ、このことばが一般に広く知られることとなってきたようで、事実その数はグンと増えているようです。 個人の「自己破産申し立て」は、90年には約1万件に過ぎなかったのが、98年には10万件を突破し、99年には約12万2千件に達しているそうです。 個人が自己破産に追い込まれる事情はいろいろ考えられます。 ただし、その「事情」いかんによっては、いくら自己破産が認められても、債務、つまり借金を返す義務がなくなってすべてチャラといかない場合があることはご存知ですよね。例えば、ギャンブルや単に無駄な買い物などの遊びに使ったお金です。 そういう借金はさておき、最近の長引く不況のために、会社のリストラにあって職を失った、あるいは減給されたサラリーマン。経営する店の売り上げが落ち込み、資金繰りに悩んでいる個人事業主。そのため、やっとの思いで手にしれたマイホームの住宅ローンの返済計画はガタガタ…という人たちを、破産せずに生活再建の支援をする法律を整備しようとしているわけです。 現状では、住宅ローンを抱えて自己破産すると、持っている財産をまず精算して返済にあてるため、マイホームは当然手放さなくてはなりません。 でも、新たな手続きだと、できるだけ手放さなくても済むように、70歳までなら最長10年間、ローンの返済を後ろに繰り延べすることが認められます。 とはいっても、誰でもが認められるわけではありません。 住宅ローン以外の債務総額が3000万円以下であること、再就職などで一定の収入が見込める個人が対象となります。 この程度の条件がつくのは、厳しいようですが、仕方がないと思いませんか。 一般的に、個人が借りる最大の借金は住宅ローン。その住宅ローン以外で3000万円を超える借金を作ってしまう人は、本人にも一定の返済努力を求めるこの法律の考え方には合わないと思います。また、再就職などをして収入を得る努力をする意志がない人も同様です。 その条件がクリアできれば、ともかくマイホームは手放さずに、裁判所が認める返済計画に沿って原則3年(最長5年)で、一定額を返済できれば残りは免除になります。 その一定額は、どのくらいになるのでしょうか。 サラリーマンの場合だと、次の多い方の金額が返済金額となります。 1)年収から税金や最低限の生活費を差し引いた金額の2年分 2)最低弁済額 ( 100万円か、債務総額の20%のうち、多い方 ) 具体例をあげると、年収500万円(税込み)、妻と子ども1人を扶養している夫が、1000万円の債務を抱えた場合、 1)の計算額は、約194万円となり、2)の計算額は200万円となるので、この人は200万円を3年で返済できれば、残りの800万円については免除となります。 以上のように、個人にも、自己破産しないで生活を立て直す道を開こうという動きはとてもよいことだと思います。 でも、これは事後策でしかありません。 もともと借金を自己責任で返済するのは、大原則。返せない金額は借りてはいけません。 住宅ローンだって「借金」です。「借りられる金額」を借りるのではなく、「返せる金額」を借りるべきだ、ということを忘れてはいけません。 借りてから泣く泣く返済の努力をする前に、やるべき努力はあるはずです。 |
|
|
|