【主婦FPの視点】経済ニュースなんてコワくない!


◆「サイケンホウキ」を見逃すな
○ 8/04 ○ 栄田育子(CFP)

 鹿野さんがこのコラムで書かれた、「そごう問題」。
 「あんな、大きなデパートも倒産するんだ」
と誰もが思うような出来事でした。

 さて、「そごう」が倒産してしまったのは、国がいったんは応じよ うとした「債権放棄」に国民の反発が大きいとわかり、結局断念した からでした。

 この画数が多くてとっつきにくい「債権放棄」とは、わかりやすく 言うと、お金を貸した人が、返してもらう権利を捨ててしまうことで す。一般的にはお金を借りている企業が、貸してくれている銀行に対 して依頼し、貸す側の銀行が「債権放棄は合理的である」と判断でき た場合、認められるようです。「そごう問題」でよく耳にするように なったこの言葉ですが、実のところ最近多いようなんです。

 このコラムを書くにあたって、Infoseek(インターネット検索サイ ト)で「債権放棄」と入力して検索してみました。結果として数百件 見つかったのですが、その中のいくつかをチェックしてみると、

「××銀行が○○という会社に対して債権放棄を実施した」

というニュースリリースが多いのです。

 先ほど書いたとおり、貸す側が「合理的である」と判断したため、 債権放棄は実施されるとするならば、何を持って「合理的である」と 判断するのでしょう?

 この問に対する答えは、金融再生委員会という国のお役所が挙げて いる、次の3つの要件が該当しそうです。

 1)債権放棄をすることによって、残った債権を回収しやすくなると判断できる
 2)債権放棄を求める側(お金を借りているほう)の経営責任を追求する
 3)債権放棄を認めることによって、社会的な混乱を招かない

 つまり、債権放棄を認めることによって、お金を借りている会社の 経営がうまくいくと判断できて、残った債権をより確実に返済しても らえると見込めて、なおかつ混乱が少ないのであれば、合理的である と判断されるということのようです。

 債権放棄を認めることで、日本経済が元気になるならばとてもいい ことのように思えますから、どんどんやればよさそうなものですが、 そもそも返してもらえそうもないほどお金を貸してしまった方の責任 は追求しなくていいのでしょうか? 私は、債権放棄実施のニュース を聞くたびにこの点を疑問に思ってしまうのです。

 そもそも、放棄された債権の元は我々が預けた預金です。
 「ゼロ金利」の時に書きましたが、金融機関は我々が預けたお金を 借りたい人に貸して、その利ざやが儲けになるのでした。

 しかし、貸したものを返してもらえないのですから、銀行は儲かり ません。その結果として、「貸し渋り」という現象が起きたり、日本 経済全体が沈滞させてしまっていて、我々消費者の生活や資産に大き な影響を与えています。銀行が我々のお金を無駄使いした結果、我々 が被害者になっているのです。おかしな話ですよね? 我々は、加害 者である銀行の責任をもっと追求してもいいと思うのです。

 とはいえ、日本経済が元気になるためには痛みを伴った改革が必要 だとされています。つまり、我々のお金の無駄遣いを認めてしまうこ とも、少なからず必要なのかもしれません。しかし、「そごう問題」 では、債権放棄を認めたくない!という世論(我々の意見)が、結果 として金融再生委員会の決定を覆しました。少なくとも、我々は指を 加えて成り行きを見ていくのではなく、企業や国の行動にチェックを 入れて、意見を述べていくべきでしょう。

 「被害者は泣き寝入りするしかない」なんて事はないのです。