【主婦FPの視点】経済ニュースなんてコワくない!


◆近ごろの「倒産」って? 〜そごうに行って来ました!〜
○ 7/28 ○ 鹿野さち子(AFP)

 鹿野家は梅雨明け後初めての週末、「小倉そごう」に行きました。倒産し たから取材に行こうと思ったわけでなく、ニュースが出る前からご近所のI さんと一緒に行く約束をしていたのです。「安い!」に目がない私は「もし かしたら倒産記念大セールで、倉庫から掘り出し物わんさか出てくるのかし ら?」ということも少しは期待して行きましたよ。

 Iさん宅のステップワゴンに乗って、小倉の町に着くとなんか道が混んで います。結局駐車場に入るのに25分もかかってしまいました。お店の中に 入ってまたびっくり。入り口に「この度は民事再生法を適用いたしまし た・・・全力を尽くします・・・云々」という張り紙はあるもののその 他は何も変わったことがなく、なんか繁盛してるんです。

 丁度バーゲン時ということで活気に満ちていましたし、店員さんもにこに こしています。Iさんは御用達のブランド店で、そのメーカー社員の方にこ んな話をしたとのことです。「そごうがつぶれても困らないけど、ここでこ のブランドが買えなくなると困るのよね。」

 そうか、「百貨店そごう」といってもこの小倉店の場合、中はほとんどの 専門店街と同じで各ブランド店がテナントとして入って成り立っているんで した。掘り出し物なんか出てこないはずです。

 それはさておき、我々が日常使っている「倒産」という言葉は明確にどう いうことをさすかは実はとても曖昧なのです。

 会社が資金繰りに困って経営困難に陥った場合を「事実上の倒産」といい ます。でも法律的には「倒産」と言わず、その状態にどう対処するかで区別 します。

 まず「関係者だけで話し合いをしてなんとかやってしまおう」という方向 性のものと「裁判所の判断を仰ぎながらみんなの利害を調整しよう」という ものがあります。

 そして裁判所の下で、正々堂々と関係者の交通整理を行なう場合には (1)残ったものを処分して会社をなくしてしまうもの と(2)会社をもう 一度立て直そうとするもの とがあります。(1)を行うための法律には「破 産法」や「商法の特別清算」などがあり、(2)では「会社更正法」と、そご うがとった「民事再生法」が主なものです。

 近ごろの「倒産」のイメージが変わってきたのは、有名企業などでこの (2)を選択する場合が多くなったからです。つまり「倒産」が即「会社の 死」を意味するのではなく、瀕死の重体にある会社を大病院に運んで手術し て、時には臓器移植もして、復活させるのが最近の「倒産」のうちで「会社 更正法」や「民事再生法」を適用したケースなのです。

 そごうの場合も会社を復活させるための「民事再生法」適用だったのです が、「再生」するためには「悪いところを切り落とさなくてはいけない」と いうことで、採算の合わない一部の店舗については即閉鎖というイメージ通 りの「倒産状態」になりました。

 解雇されるか、希望退職するか、再生中の会社に残るか、どれをとっても 従業員にとってはつらく厳しい前途です。所属している会社が再生中だと、 これからローンが組めないとか、カードで買い物ができない場合があるなど といった不便も出てくるそうです。従業員やそごうに商品を納入していた取 引先、債権者の方にとっては悲劇には違いありません。連鎖倒産や自殺者が 出てこないことを祈るばかりです。

 とはいえ古いところでは、牛丼の吉野屋、新しいところではかまぼこのカ ネテツデリカフーズなんかも「民事再生法」の前身である「和議法」を適用 して生まれ変わっています。もっと古いところではキッチンのサンウェーブ なんかも「会社更生法」適用、上場廃止から再建して再上場を果たしました。

 そごうについても、「倒産イメージは染みついてしまうけど正々堂々裁判 所の下で出直そう」という態度をとったことが消費者に評価され客足も戻っ てきているようです。

 私もIさんと共に、がっぽり買い物をして再建に貢献してきました。「そ ごうがなくなっても困らない。他で買っても同じ」と言われないようになん とか生まれ変わってもらいたいものです。

★☆★今週のキーワード★☆☆

民事再生法

 これまでの「和議法」にかわって、会社の経営権を残したまま会社を再建 するための法律で2000年4月1日より試行されています。どこが変わったかと いうと、

(1)会社が「やばい!」状態なら、とくに債務超過でなくても申請できると 言うこと。
(2)再建計画は申請してから裁判所に提示すればよいところ
(3)利害調整の取り決めなどをするときの議決要件が緩和されたこと。

などです。つまり会社がどうしようもなくなる前に早め早めになんとかする 事ができ、手続きも大幅に簡単になったということです。

 半面、「借金チャラをねらった計画倒産が増えるかも」という懸念も。

これに対して「会社更生法」は株式会社に限られている点、経営者が全員 交代しなくてはいけない点などが「民事再生法」との大きな違いです。