【主婦FPの視点】経済ニュースなんてコワくない!


◆「ゼロ金利」ってなに?
○ 7/14 ○ 栄田育子(CFP)

 こんにちは。CFPの栄田育子です。
 火曜日コラムの第1回を読んでくださった方はすでにご存知かも しれませんが、投資信託を売るためのソフトウェア設計という仕事 をしているワーキングミセスです。金曜日のほうもよろしくお付き 合いくださいね。

 今日は最近新聞やニュースに出てこない日はない「ゼロ金利解除」 についてお話させていただきます。

 そもそも「ゼロ金利」ってどういうことだかご存知ですか?  銀行や郵便局へ行くと、「定期預金1年 0.12%」なんて表示されて いて、こんなのもはや金利ではないってくらい低金利だというのは、 皆さんご存知だと思いますが、それにしたって金利は「ゼロ」では ありません。では何を指して「ゼロ金利」というのでしょう?

 「ゼロ金利」を理解するためには、金融のしくみを理解する必要が あるのです。では、その中身を紐解いてみましょう。

 そもそも「金融」とは字の通り「お金を融通(ゆうずう)すること」 です。融通するとは「誰かが誰かにお金を工面する(貸す)こと」です。

 つまり金融機関は集めたお金を誰かに工面してあげる組織のことを 言うのです。例をあげると、銀行という金融機関は、私たちが預けたお 金を、お金を借りたい人に工面して(貸して)いるのです。

 この「誰かが誰かにお金を工面すること」は、金融機関と客のあい だだではなく、実は金融機関どうしでも行われています。つまり、お 金が余っている金融機関は、お金を欲しい金融機関に工面してあげて いるのです。

 この金融機関同士がお金を融通しあうところ(「市場」と呼ぶこと が多く、「場所」ではない)の一つが「インターバンク市場」と呼ば れるものです。「インターバンク」という名の通り、ここには銀行な どの金融機関しか参加できません。

 「インターバンク市場」には、「お金を貸すよ」という金融機関と 「お金を借りたいよ」という金融機関の仲立ちの役割を果たす「短資 会社」と呼ばれる会社があります。短資会社の役割は、賃貸マンショ ンやアパートを借りるときの不動産屋さんの役割と同じで、仲立ちし た時の手数料をもらいます。

 この「インターバンク市場」において、他の銀行にお金を貸す(借 りる)場合の金利はもともと低いのですが、超低金利の続いている今 は一段と低くなっています。

 すると、「短資会社」にあげる手数料を差し引いた金利は限りなく 『ゼロ』に近くなってしまいます。これを指して「ゼロ金利」と呼ん でいるのです。


 では「ゼロ金利」は私たちにどのようにかかわっているのでしょう?

 身近な例は住宅ローンです。家を買う時などにお金を貸してくれる 金融機関は限りなくゼロに近い金利で、お金を仕入れます。そして私 たちに「住宅ローンの貸しだし金利」を払ってもらって、金利差分の 儲けを得ることが出来ます。

 つまり、ここ2年ほど住宅ローンの金利が低かったのは、この「ゼロ 金利」のおかげで、貸すためのお金を低い金利で調達できたからです。

 これだけだと「解除しなくてもいいじゃない」と思ってしまいます が、世の中そんなに甘くありません。ツケは私たちが預金したときの 低金利という形で回ってきているのです。

 預金の利息は、金融機関にとっては必ずかかってしまうコストです。 例えば、1年間預けて0.1%という金利の預金なら、100万円預けたら 1年後には必ず1000円利息をつけなければいけません。貸出す金利が 低くても金融機関は利息を払わなければならないのですが、払いすぎ てしまうと利益が出ないので、預金の金利は低くなっているのです。

 しかし、いくら低金利といっても、住宅ローンの金利は預金の金利 の100倍以上になっています。借りるほうにとってはありがたい低金利 のように思えますが、実は借りてくれると金融機関は儲かるというの が「ゼロ金利」なのです。

 もし近いうちに「ゼロ金利」が解除されたとしても、せいぜい0.25 %程度の上昇と予想されています。このくらいの上昇ではまだ「預金 でお金を増やそう」なんて考えないほうがいいでしょうね。